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読書感想文「秋期限定栗きんとん事件(米澤穂信)」

「秋期限定栗きんとん事件」の読書感想文

この作品は春期限定いちごタルト事件、夏期限定トロピカルパフェ事件の続編である。シリーズを通しての主人公は高校生の男女二人。どちらも小市民を目指していて協力し合っている。小市民を目指している、ということは自分たちは小市民ではない、と考えているということである。
 
前作の夏期限定トロピカルパフェ事件で協力関係にあった二人は二人でいるといつまでも「小市民を目指す私たち」から抜け出せない、それは「小市民を目指している私たちに酔っているだけなのでは?」と考え協力関係を解消した。シリーズ初期からの疑問である小市民とはなんなのか、小市民を目指すと思っているうちは小市民とはいえないのでは、という疑問に主人公たちも感じて終わる。
 
そして今作で二人は「小市民を目指している時点で小市民にはなれそうもない、しかしそれで諦めるのも芸がない」という結論をだし再び元の関係に戻る。この作品は推理小説であるが、主人公二人の自分とはどういった存在なのか、自分は何を目指せばいいのか、自分の未来はどのようなものなのか、といった思春期に考えがちな感情を丁寧に描いている。 
 
今作では主人公二人に対比して「自分はすごい、いつかこれから大きなことをやる」と漠然と考えているが能力は平凡な典型的な二人が目指す小市民も描かれている。私はこの作品を通して誰でもコンプレックスはあり目指したい自分、というものがある。
 
しかし、目指したいものを意識しすぎるがあまり時には遠回りをしてしまうこともある、ということを考えた。そしてコンプレックスを克服したい、短所を克服したいと思っている一方でこれが自分の個性だ、このままでなぜ悪いと考えている自分もいるのではないか、と考えた。少なくとも私はそうである。
 
何かを目指し続けることももちろん大切なことだが今の自分を受け入れ、よりよくするのにはどうしたらいいのかを考えることも同じくらい大切だと思った。私もこの本の主人公や登場人物のようにうまくいかないことや自分にもどかしいことがあってもそれも個性であり長期的に改善していく姿勢を持ちたい。
 
そして自分では短所と考えていた部分を他人に感謝されたり褒められたりした際は卑屈になるのではなくその気持ちを受け止めたいと考えた。
 
(20代女性)

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