「鹿の王」の読書感想文
さすがとしか言いようがありませんでした。上橋菜穂子さんの作品には、必ずと言って良いほど地の繋がりではない絆があります。この物語の主人公であるヴァンは、自分と同じように謎の病から生き残った少女を拾います。名前はユナとつけました。本当だったら、彼がユナを育てる義理など何もないのです。
そのまま捨てていったとしても、誰も彼を責めたりはしません。ですが、彼はそうはしなかった。彼は、血の繋がらないユナを守り続けます。その姿は、血の繋がりなどなんの意味もないという事でした。血が繋がっているから親子で、血の繋がりがないのは他人という図式は間違っているのかもしれないと思いました。
ナッカによってユナがさらわれた時には、ヴァンは初めて恐怖を感じたのかもしれません。今までユナを守ってきたのは、もちろん一人で置いていく訳にはいかなかったからでしょう。でも、それだけではなかったと思うんです。ユナを守ってきたのは、もしかしたら自分の為だったのかもしれません。
そうしなければ、彼自身恐怖で動けなかったのかもしれません。自分が愛する故郷も守れず、奴隷として働かされていたヴァンにとって、ユナは大切な家族なのです。例え血は繋がっていなくても、ヴァンにとっては彼女しかもう家族と呼べる存在はいないのです。ヴァンがユナと再会出来た時には、本当に嬉しかったです。
少し複雑な設定でもありましたが、登場人物がとても魅力的なので、あまり気になりませんでした。ヴァンが犬達を連れて去っていく場面では涙が止まりませんでした。親子の絆というのは、けっして切れる事はないと思います。例え血が繋がらない家族の為であったとしても、人はどこまでも 強くなれるんだと知りました。
不思議な話ですが、本当の親子よりも親子らしく見える時があるぐらいでした。本当の父親とは、こういう人の事を言うのかもしれません。単なるファンタジーではない、人間愛が描かれている所が魅力です。
(40代女性)
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