読書感想文「精霊の守り人(上橋菜穂子)」

ドラマ化され、話題になっている『精霊の守り人』を読了した。まずはその世界観が素晴らしい。完全なるフィクションであることはわかっているのに、かつてこの世界のどこかに本当にこんな国があって、本当にこの物語に出てきた登場人物たちが実在しているような気持ちになるほど作り込まれた世界観である。

 

特に歴史背景や文化、風土の作り込み方は秀逸で、草の匂い、その土地の景色が目の前にあるかのように感じてしまうほど、その世界に入り込んでしまった。主人公バルサは悲しい過去を背負いながらも逞しく生きる女用心棒で、短槍の使い手。本文中にバルサは美人、という表現は出てこないが、実写化されたドラマを見たので、私の頭の中で想像するバルサは美しい人である。

 

幼馴染のタンダとの関係も微笑ましくて、タンダの恋心が見え隠れするシーンが幾度かあるのだが、そのどれもが温もりのある愛情で、読んでいて心地よかった。そして、皇太子チャグムは最初こそ生意気な子供という印象だったが、精霊の守り人として生きることになった彼の心の動きや葛藤は苦しくなるほど切なかった。

 

しかし、わがままな子供から、自分の置かれた立場をよく考え、悩み、不安で押しつぶされそうになりながらも、だんだんと成長していくチャグム。読み終える頃には私にとって一番好きなキャラクターになっていた。また、呪術師トロガイや星読博士のシュガなどの脇役たちもそれぞれの正義のためにまっすぐに生きる姿は勇気が貰える。

 

そして、ラストシーンのバルサとチャグムのやりとりにはつい涙が溢れてしまった。自分の気持ちよりも皇太子として民のために生きると決めたチャグムの強さ、そしてすべてを理解して、このまま一緒に連れて行きたい気持ちを押し殺して見送るバルサに感動した。

 

いつの間にか、チャグムの成長をバルサやタンダとともに見守ってきたかのような気持ちになっていたからかもしれない。『守り人』シリーズにはまた続きがあるので、今後も続けて読んでいきたいと思った。

 

(30代女性)

 

 

 

小学校5年生のとき、学級文庫の中にあったこの本に出会った。本を読み終わった瞬間、私は放課後の教室にいたけれど、その現実に「戻ってくる」のに時間がかかったのを覚えている。

 

登場人物の服装、食べ物、風習、文化、方言に至るまで、文化人類学者でもある作者の知識に裏打ちされた、綿密な描写がされているから、まるで実在する国や人物の物語を、ついさっきまで自分も一緒に、その場で体験しているような感覚に陥っていたせいだった。彼らが見ている世界の色や、その場面の匂いまで感じられる気さえした。

 

登場人物の心理描写もたくみで、人生経験の少ない11歳の少女でも、彼らに共感し、一緒に泣いたり怒ったり笑ったりした。だからこの物語を読むのはいつも、教室にだれもいなくなる放課後だったのかもしれない。

 

最初に読んだ時、一番共感し、感情移入したのはチャグムという少年だった。もともと一国の皇太子だったのに精霊に取り憑かれて命を狙われ、庶民として逃亡生活を送ることになってしまった彼が、かわいそうで仕方なかった。同じ11歳ということもあったのかもしれない。

 

自分の力ではどうする事も出来ない運命に憤り、周りの大人に対する理由も無く苛立ってしまう。癇癪をおこして周りに当たり散らしては、そんな自分の幼さ、もっともなさに気づいてしまう瞬間など、読んでいて一緒に顔を覆いたくなった。

 

少し成長して、高校生くらいになり、恋愛に興味を持ち始めると、今度は主人公の女用心棒バルサと、その幼なじみタンダとの関係が気になって仕方なくなった。

 

バルサが抱えている闇と、それに気づいていて静かに寄り添っているタンダ。お互い思い合っているのに、通じ合う事は無い関係が、むずむずるようなもどかしさで描かれていて、読むたびに身悶えしたい気分になった。

 

そして現在、一児の母親となってからは、序章の部分にほんのわずかしか登場しない、チャグムの母親の気持ちが痛いほど分かるようになった。

 

主人公のバルサにチャグムを託すシーンからは、自分の子どもを失うかもしれない恐怖、なんとしてでも生かしてあげたいという母親の切実な気持ちが伝わって来て、胸が痛くなる。

 

11歳で出会った物語は、20年経った今でも、全シリーズ揃ってそばにある。本が読めるようになったら、私の子どもにも読ませてあげたい。この「精霊の守人」は私という人間の一番真ん中の部分を支える大切な存在だ。

 

(30代女性)

 

 

 

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1 件のコメント

  1. タジマハル より:

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