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読書感想文「蜜蜂と遠雷(恩田陸)」

読書感想文「蜜蜂と遠雷(恩田陸)」

「蜜蜂と遠雷」の読書感想文①

タイトルからは想像できなかった物語は、初めの数ページで幕を開ける。目次には曲目の題名ばかり。そしてピアノコンクールのプレイリストの羅列。正直クラシックには精通していないのでこの物語を楽しめるのかいささか不安になった。物語は、近年新たな才能者を見出している芳ヶ江国際ピアノコンクールのオーディションから本選大会までのお話。
 
主力の登場人物は3人。風間塵。16歳の養蜂家の息子でピアノを持たず幼いころユウジ・フォン・ホフマンに見いだされ教えを受けていた天才少年。栄伝亜夜。子供の頃、天才ピアニストとしてCDを出すまでの人気となるが、無二の存在だった母親を亡くしてからピアノが弾けなくなってしまったヒロイン。マサル・カルロス・レヴィ・アナトール。
 
ジュリアード音楽院が誇る完璧な王子様。蜜蜂と遠雷のタイトルならまさに風間塵が主人公なのだろう。彼の奏でる音は、聴くものの心をとらえて離さない。でも、私が本を読み終えたときに主人公として燦然と輝いていたのは、栄伝亜夜だった。これは、彼女の物語。そうとしか思えなかった。
 
どんなに風間塵が稀有な存在だとしても彼女がいなければこの物語は動かない。彼女の復活のため周りの暖かな人達がそばにいて背中を押し、不思議な少年風間塵がふいに現れて背中を押し、幼い日の思い出のマークンがピアニストになって背中を押す。
 
もうどんどんと輝く舞台に向けてお膳が整っていくのだもの。もちろん他にも良い脇役たちが数多く登場する。ピアノコンクールに出場する他のメンバーの毒とか年齢制限ぎり最後のコンクールに挑む高島にもまた一つ別の話のような存在感がある。ピアノコンクールの何たるかが全くわからないのでちょっとした勉強にもなったし本選の結末を読者の想像でわからせるところも心憎いと思った。
 
それでも私にはみなどこかで亜夜の一本の物語にかかわっていく道すがらのような気がした。そしてそれが最高に気持ちが良かった。まるで1本の大作の映画を見終えたような満ち足りた読後感があふれた。
 
(50代女性)

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