「向日葵の咲かない夏」の読書感想文①
「向日葵の咲かない夏」はミステリーである。従って、これを読んだからといって自己啓発的に気分が明るくなったり、悩み事が解決したり、また何かの新たな知識を得たりするようなことはない。本当に暇つぶしのための本だ。だが、この本はその点に関しては非常に有能である。
1ぺ―ジ読んだら、もう先が気になって仕方ないのだ。気が付けばこの本に虜になり、麻薬中毒者のように「早く続きを、続きを」と狂ったようにページをめくってしまうだろう。そして一度、ネットでこの本を検索するかもしれない。それはこの本が、本当にこの1冊で終わりなのか、続編が未発行になっていないかを確かめる為である。
するとこの本が一巻完結であり、続きが執筆中であるなどという生殺し状態でないことにひどく安堵するだろう。あなたは安心して、本の世界に戻りまたページをめくることになる。この本はミステリーであるが、話の大筋は「小学生である主人公が、クラスメイトの知人を殺した犯人を捜す」となっている。
このクラスメイトなのに「知人」というのが気になるところである。主人公とはちょっと特殊な関係なのだ。しかも驚いたことに、この「知人」は、殺害された後、ある形をして速攻で主人公のところへやってくる。
つまり、殺された人が探偵役のところへやってくるのである。しかも言葉も話せる。ということは犯人はすぐに分かりそうなものなのだが、ここが面白い。私はこのとある設定で物語が進む本を他に見たことがない。物語には「オチがどうなるか?」は気になるところである。勿論この物語にはちゃんとオチがついているので安心してほしい。
そして二段オチになっているので、最後の文を読めばあなたは絶対に前のページも戻って何度も見返してしまうに違いない。この本には叙述トリックがあるのだが、多くの人は騙される。ミステリーというと、「ひっかかるものか」と疑って読むのだが、私も見事に騙されてしまった。
どこから誘導されていたのか、確認してしまうだろう。そして騙された箇所を見て、ついニヤニヤしてしまうだろう。とにかく次が気になって最後まで飽きさせない本である。私は続きが気になって気になって、4時間ほどで読んでしまった。
気が付けばあたりは薄暗くなっており、周りの暗さに驚いたぐらいだ。本当に時間泥棒である。読み終わって私が思ったことは「この主人公と、殺されたクラスメイトに同情する」だった。この同情の種類は、実は同じものではない。それぞれ別の意味で同情するだろう。
おそらく皆もそうだと思う。そしてこの別ベクトルの同情が交差するところで、悲しみが襲ってくる。指南する大人がいないと人の人生はこうも簡単に歪んでしまうのか、と感じた。だが同時に、「…だが、おもしろかった!!」と納得できる本だと思う。
この、「…だが、」は重要である。ここに、この本を読んだ色々な感情が渦巻き、”それってありか?この主人公には同情するが、この知人は不幸だが、”と思うところがいくつもあって、だが、「おもしろかった!!」という感想に落ち着く。それがこの本の魅力である。
(30代女性)
「向日葵の咲かない夏」の読書感想文②
何の前情報もなしに、読み進めていったので、最初のうちは、いわゆるファンタジー系のような作品だと捉えていました。なぜかって、自殺したクラスメイト・S君が、蜘蛛の姿になって、主人公・ミチオ君のところにやって来たからです(いずれも小学生)。
しかも、S君が言うには、自分は殺されたんだと、で、その犯人を見つけてほしいんだと、そんな流れになっています。これだけ聞くと、転生ものと、推理小説と、ファンタジーを合体させたような作品を連想しがちじゃないですか。
でも実際は違います。まず、ファンタジーなんて、カジュアルな世界観とはかけ離れています。妙に現実的で、生々しくて、なんというか、作品全体に不気味さ、陰鬱さのようなものがあふれかえっているんですよね。
例えば、ミチオ君の母親は、実の息子であるミチオ君のことを「お前」と呼びます。「お前」のニュアンスにはいろいろあると思いますが、ここでは完全にネガティブな意味合いです。そしてそれには理由があります。
また、本作には、いわゆる犯人のような(なんかちょっと怪しい)存在が、いくつかいますが、そのうちの一人が執筆した小説がありまして・・。そのタイトルは「性愛への審判」。
どう表現していいのか、性愛とか、審判とか、あまり馴染みのない、でもどこか生々しいワードで構成されていて、なんかちょっと、おどろおどろしい雰囲気が漂っていますよね。実際、内容もそんな感じです。
他にも、S君の死体からは、排泄物が垂れていたり、ミチオ君が、妹・ミカと蜘蛛のS君とが仲良くしているところを見て嫉妬したり・・。断片的な説明になってしまいますが、妙に生々しいんですよね。
これは本当に、ファンタジー系の作品なのか、いったいどんな結末へと向かうのか。ページをめくるたびに、疑問が生じてきて、その疑問を解消するために、ページをめくる手が止まらなくなってきます。
(40代男性)
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