読書感想文「透明カメレオン(道尾秀介)」

「嘘の力を借りて現実に立ち向かう」というストーリーなので、読む人によっては誤解や嫌悪感を生むかもしれない。
 
私自身、この物語の登場人物のような、すさまじい出来事はまだ無いので、正直なところ、100%共感できかねない部分もある。しかし、かたくなに「嘘はいけない」と言いきってしまうほど、もう子供でもないし、特に他人のために嘘をつくときは、そこに思いやりの意味も含まれるということは良くわかる。
 
「嘘も方便」というような、ずる賢い感じではなく、やさしい嘘という感じ。「嘘」と言ってしまうと、ちょっと道徳的に悪いような気がするので、「妄想」と言い換えてもいいかもしれない。ちょっと現実逃避したいとか、現実に足りないことを少しの妄想で補うとか、誰しもやっていることだし、しかも誰のことも傷つけたりしないなら、嘘は人生に本当に有用なものとなる。確かに、透明なカメレオンがそこにいると思えば、ちょっと毎日が変わりそうだ。
 
この話を読んで、「嘘」についてちょっと印象が変わった。本当に弱いだけの人間なら、「嘘をついて逃げる」かもしれない。嘘を、人を傷つけたり、人生をごまかしたりするように使うかもしれない。でも、この話の主人公は、自分の弱さを受け入れたからこそ、気づき、見えているのだ。

 
 
「弱いことは、強くないってことではない」という意味のセリフもあるが、嘘を利用して現実に立ち向かおうという姿勢は、実はなかなか強かだ。人生が少し豊かになるのなら、辛い現実を乗り越えられるなら、「嘘をつかない」よりも「嘘をつく」方がよっぽどいい。
 
そして主人公は、「自分が弱い人間だからこそ、他人の弱さがわかる」から、この方法を人のために使う。自分の経験を生かして、人のために嘘をつく。弱さにも、嘘にも、こんなにやさしい一面があるのだ。嘘ってそんなに悪いことではないし、自分の弱さもそんなに悪いことでもないって思えた。
 
邪道な方法かもしれないけど、弱さの中から生まれる強さってこういう事かもしれない。
 
(40代女性)
 
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