読書感想文「マザーズ(金原ひとみ)」

この本を読んで、私はあらためて母親というのは孤独な職業だと感じた。この作品はマザーズという題名からも分かる通り母親たちの物語だが、これは物語に共感できる母親たちよりも、子供を持つ父親、親を持つ子供、現在は子育てとは縁遠い所にいるがいずれ関わるであろうすべての人に読んでもらいたい作品だ。

 

物語にはそれぞれ違った家庭環境で生活する三人の母親が登場する。ドラッグに溺れる作家のユカ、息子を虐待する専業主婦の涼子、不倫の果てにその男との間に子供を作ったモデルの五月。勿論小説だからかなり過激に書かれてはいるものの、母親なら誰しも共感せずにはいられない三人の感情が私たちの中にはあるように思える。

 

三人それぞれが抱える悩みや葛藤は一見別々のように見えるが、共通して窺えるのは旦那が子育てに非協力的、そして妻に対して興味を持たないことだ。三人の子供はみな同じ保育園に通わせている。保育園に通わせながら仕事をしたり、自分の自由な時間を手に入れている。

 

それは一見母親たちにとって何不自由ない暮らしをしているように見えるが、いくらまわりの手助けがあったところで妻にとって夫の協力があるかないかは大問題なのだ。男は外で働いているからというのが言い訳にすらならない現代では、夫は子供を一緒に育てながら妻のサポートをするくらいでなければならない。それができている家庭が今日本にどれくらいあるだろうか。

 

 

 

マザーズの中でもとくに注目したいところは、涼子が息子を虐待するシーンだ。虐待はもちろんしてはいけないこと。それは正論であり、きっと子育てをしていない人間はその答えしかあり得ないと思っているだろう。しかし実際子育てをする母親はたぶん違うはずだ。虐待がいいことか悪いことかという風に見るのではなく、誰しもが涼子になってしまう可能性があるということに母親たちは皆脅えながら密室育児をしているということを知ってほしいのだ。

 

子供は可愛いという前提があるからこそ、母親は子供と上手くいかなかった時苦悩する。自分はおかしいのか、自分は母親失格なのかと思い込む。それがつもり積もって爆発すると、いつの間にか手をだしてしまっている。

 

私は思う。虐待した母親だけを責めないでほしい。誰よりも一番母親が自分のしたことを責めているのだ。だけど本当の責めるべき場所は、その環境なのだ。頼るべき人もいない、夫も家庭を離れていく、そんな環境で穏やかに子育てができるわけがないのだ。

 

母親は逃げられない。自分で望んで作って産んだくせにと他人は言うだろうが、子育ては誰しも最初は未知なのだ。母親が最初から母親なわけではない。産んだ側から母親になれるわけではない。子供と一緒にだんだん母親になっていくのだ。だから、誰も母親を責めることはできない。母親は既にがんばっているのだ。がんばっていない母親はいないのだ。私はそれをどうしても言いたかった。

 

この本を読んで私は母親の孤独さがよく表現されていると思った。フィクションではあるがどれも現実にあっておかしくないことばかりで、共感させられることも多かった。自分の育児が正解なのか不正解なのか分からず迷う部分は多々あるのだが、これを読んであらためて育児には正解もマニュアルもなく、親子の数だけ方法があるのだと思った。

 

 

(20代女性)

 

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