読書感想文「まつらひ(村山由佳)」

子どもの頃から、祭というものは身近にあって、当たり前のように毎年恒例のイベントとして参加してきた。だが、一度その土地を離れてみると、地域の文化が色濃く反映される「祭」が、その土地のその季節でしか生まれ得ないものだったということに気付く。この6つの短編集では、祭の季節を背景に女性たちの恋愛、そして官能が描かれている。

 

人を想う気持ちや、満たされたい切実な欲望が魅力を持つのは、その主人公とともに気持ちを揺さぶられるからだろう。恋愛も官能もベールを剥いでしまえば、ただの醜い欲の塊になりかねない。それが時に美しい物語として、また時には切なく身を引きちぎられるような物語として、そして背筋が凍るほどの怖さを感じる物語としても変幻自在に形を変えるのを感じた。

 

 

 

そして、それだけ色んな愛情の形を見て、恋愛というものがまたわからなくなるのである。恋愛、なんて言葉の定義には収まりきらないくらいの濃厚な物語に触れることは、奥へ奥へと導かれて底の知れない深い世界を覗きこむような体験だった。

 

小説に必ずしも共感は必要ではないとは考えるが、それでも主人公と喜怒哀楽を共にして物語にのめり込むためには、脳内で鮮明にその場面が描けることが大事だろう。本作は、艶やかな季節の描写と、繊細な心理描写に一気に心を掴まれて、読み始めた途端に「まつらひ」の世界に没頭することが出来た。

 

これぞ作者の力量、なのだろうけど、本によっては人気があっても世界観に入れないものもあって「相性」の問題もあるのだろう。そういう意味でも、自分には作者の描く世界観がとても好きで相性が良いのだと勝手に思っている。

 

特に印象的だったのは、最初の「夜明け前」で、レタス農家で姑と同居し、夫と娘と幸せな家庭を築いているのに、艶夢〈えんむ〉つまり、激しい愛の営みの夢を見る舞桜子の話。龍神まつりを機に明らかになる真実は、とても衝撃的で鳥肌ものだ。「龍神まつり」のエピソードが舞桜子と重なって、繰り返す歴史の中でまた朝は来る。そのどうしようもない事実が切なくて、泣きたいくらい美しい夜明けが目に浮かんだ。

 

(20代女性)

 

 

 

 

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