「ジャン・クリストフ」の読書感想文
この小説はベートーベンをモデルにしていると言われているが、ロマンロランはそう思ってほしくないと語っている。ロマンロランはノーベル賞受賞作家でもある。岩波文庫全4巻あるが、どれも500ページを超えていて、しかも表現が難しくすんなり理解できないのでとても読みにくかった。しかしわれわれの生き方について教えてくれるものは大きい。
一つの行動をとったときそれに対して他人はどう反応するか、また有名人であったときにその言動が新聞(今で言うマスコミ)によってどのように拡散していくか。1900年ころの作品であるが今もなお人の心は変わらないのだと思い知らされる。ドイツで生まれたクリストフは音楽の才能はあったが、気性が激しく嫌われほとんどすべてのドイツ人から嫌われていると思われる状態で、問題を起こしフランスへ渡る。
たった一人でお金もなく病気にもなったりしてそれでもたくましく生活していく。しかし頼ろうとするのは昔の知り合いでったりする。 苦悩に満ちてはいるが、何物にもかえられない喜びはやはり人との出会い、そして愛である。男女を問わず気持ちの通じる人との出会い。結婚はしなかったが、しても良かった人はいた。
出会った女のうちまじめに愛した人もいれば、成り行きでただ求め合っただけの人もいた。ただこの物語の一番おおきな愛は青年との交流、これはもちろん愛に基づいているのだろうが、どのような関係であったかなぞだ、私には分からない。この青年とは心が通じ一緒に楽しく暮らしていたが、あるとき自分が誘い出したお祭りの騒動に巻き込まれて死んでしまう。
それを知らされないまま車に乗せられてスイスかどこかに追いやられる。後に真実を知り絶望のあまり呆然とした歳月を送る。あまりのすさまじい状態に自分もどっぷりとはまってしまう。しかし人間は強い。絶望の中からまた立ち上がり、ほかの女性を愛することができるようになる。その立ち直りの心情が手に取るように感じられる。
自分に参考になったこととして、あるクリストフのファンの老人が自宅でクリストフと会ったすぐ後で亡くなるのだが、自然な姿で自宅で寝たり起きたりして音楽を楽しみながら亡くなっていく。クリストフ自身もたった一人でお手伝いも断る有様で亡くなっていく。実際には下女が涙を拭いたり手伝ってくれるのだが。
自分もこんな風に自分の家で好きなことをしながら、布団も敷きっぱなしでよいからそこで死にたいものだと思った。
(60代女性)
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