「ダ・ヴィンチ・コード」の読書感想文
名画が関わっている推理小説で、最初に読んだのがこの『ダ・ヴィンチ・コード』だ。しかし、本書で取り上げられているダ・ヴィンチの絵は、いわゆる観賞用の作品とは言いがたいようだ。文庫本に綴じ込まれている作品の写真を見て、最初に感じたのは「気味が悪い」というものだった。
黒目が上に行った裸体の男性が、両腕と両足をふた通りの格好にしている姿を描いたものである。「これなら、確かに殺人と関わらせても違和感がないかもしれない」という不謹慎な感想を抱いた。一番ハラハラしたのは、主人公のロバートが、嫌疑を受けて逃走するシーンだ。頑固者のファーシュ警部を出し抜いて、連行を免れた時にはドキドキした。
その手際が見事で、この作品への期待度が増した。作品中、「五芒星」「悪魔崇拝」など、日本人には少々馴染みの薄い風習が取り上げられる。しかし、そうした風習への解説が、不自然でない形で登場人物によって解説されるため、作品の世界に入り込むことが、それほど難しくない。
五芒星が問題視されたのは、遺体の姿がそれを模したものだからだが、裸体で五芒星を作った意図は、最後まで明かされない。大切な謎は最後まで残すという、推理小説のお手本のような展開になっている。私が一番困惑したのは、登場人物が多いことだ。謎を抱えた人物が複数登場する。
そのため、推理小説の初心者には、みんなが怪しく見えてしまう。捜査官と一緒に謎を解いていると、たちまち問題点に突き当たり、結局、犯人が誰なのかはわからないままになってしまう。迷宮の中でホッとできるのは、ヒロインのソフィーが温かい心を持った女性だということだ。
ソフィーは、自分が事件の只中にいることをよく知っており、巻き込んでしまったロバートへの思いやりもある。こんなチャーミングな女性と一緒なら、謎の中をさまよってもいいかもしれないと、呑気なことを考える気になる。そうしたゆとりが生じてから、この作品をじっくり味わえるようになった。ソフィーは、外国の推理小説に登場する女性の中で、指折りの魅力的な女性だと思う。
(50代女性)
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