読書感想文「ドールハウスの人々(二宮敦人)」

球体人形作家で大学生のソウスケと、その彼女ヒヨリが非現実的な事件に巻き込まれていくホラー系小説である。ソウスケは若くして球体人形を作ることに長けており、天才的だと称されている。ヒヨリも彼を応援している恋人なのだが、彼女を展示会に連れていくと殺人事件が起き周囲の人間が巻き込まれていくのだった。
 
作中はずっとヒヨリの一人称なのだが、終盤になるにつれ話を語っていたヒヨリはまさかのソウスケが作った球体人形で、彼女が言った言葉や行動などは全てソウスケの妄想だったという急展開がまた面白く感じた。そして、現実に置き換えてみると爽やかなイケメンのイメージを抱いていたソウスケがかなり気持ちが悪い印象に変わっていくトリックが好きだ。
 

 
 
ただ、この話が面白いのはその一点に尽きる。ホラー・推理小説として出版されているので、読者の殆どが話の先を推理する層ばかりな為、勘のいい読者は早い段階でヒヨリが人形であるのを気付いてしまうというのが残念なところだ。何よりもヒヨリがソウスケ以外の人間と会話していないと気付いてしまうと終盤のやっぱりなという展開しか待ってないので面白みに欠けてしまうと思う。
 
なので私みたいに何も考えずとただただ淡々と読み進める人に好評なイメージがあったように思った。元々血生臭い文章を書く作家なので、球体人形の描写など気持ち悪い文章があって読む人を選ぶが、そこはホラー小説なので苦手な人はまずいないだろうし、私は楽しく読めた。
 
関節人形を題材にする設定自体、個性的で面白い着目点だなと感じるし、実際芸術家はこう言った狂った考え方をする人はいるので共感する。勿論殺人事件は起こしませんが。なによりとても読みやすい文章なのであっという間に奇妙な世界観にのめり込めた。登場人物全員が救われない末路なのが虚しいといったところだが、そもそもヒロインが人形なのだから幸せな展開などあり得ないだろう。人形に対しての執着がなくなった人間の冷たさがまたリアルに伝わってくる作品である。
 
(20代女性)
 
 
 
 

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