読書感想文「千姫様(平岩弓枝)」

本作は、「御宿かわせみ」シリーズで有名な平岩弓枝さんの時代小説だ。本作は、「御宿かわせみ」シリーズで有名な平岩弓枝さんの時代小説だ。主人公は、あの徳川家康の孫であり、豊臣秀頼の正室でもあった、千姫。物語は、大阪夏の陣から始まる。大阪城は攻め込まれ、もはや陥落は目の前。千姫は夫と姑の命を救う為、徳川陣へと向かう決意をする……。

 

そんな場面から始まった物語は、未亡人になった姫が失意の底から立ち直り、運命の男性と出会う場面へと流れていく。幼い頃に政略結婚させられ、夫や姑と良好な関係を作るものの、実家の祖父や父と婚家が戦を始めてしまう。戦国時代とはいえ、まさに波乱万丈で、数奇な人生である。当時の女性には珍しくないだろうが、政略結婚の駒にされ、家の都合で離縁させられ……。

 

 

まだ十九歳の少女なのに、千姫の半生はあまりに過酷だ。しかし彼女は、ただ運命を嘆くだけのお姫様ではない。意のままにならないことは多くても、自分に出来ることを探し、時には祖父を脅してでも、自分の意思を通す道を探す。そんな姿勢は、現代の私達にとっても学ぶことが多いように思う。

 

そして、そんな彼女だからこそ祖父や弟をはじめ、色々な人を惹き付けるのだろう。出演場面は少ないが、私の印象に残った人物は、千姫の祖父・家康と、弟の竹千代(家光)だ。敵を騙し討ちにし、家の為には平気で非道なことをする、狸親父の家康。彼は一方で、亡き母を慕い、孫娘の幸せを願う、優しい祖父でもある。

 

千姫にこまごまとした贈り物を用意し、情愛の籠った手紙を書く。敵を前にした時とはまるで違う、好好爺そのものの姿だ。その二面性がリアルで、面白い気がする。そして、姉を慕う弟の竹千代。両親が弟ばかり可愛がり、寂しい思いをしてきた彼。実家に帰ってきた千姫は、初めて対面した弟を優しく励ます。

 

「頑張って、次の将軍に相応しい人物にならねば」そんな風に、期待されたのは恐らく初めてだったのだろう。竹千代はみるみる明るくなり、張り切り始める。そして、千姫に初恋に似た思慕を抱くようになるのだ。短いが、祖父や弟との団らんの場面は微笑ましく、忘れられない好きな場面である。

 

(30代女性)

 

 

 

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