読書感想文「車のいろは空のいろ 星のタクシー(あまんきみこ)」

児童書である、あまんきみこさんの『空色のタクシー』シリーズを真剣に読み始めたのは、大人になってからだった。子供の頃に国語の教科書に載っていた『しろいぼうし』という話が忘れられず、いつかまた読みたいと思っており、ついに古本屋で購入したのがきっかけだ。しかし、今回は購入した本だけではなく、図書館で借りた『春のお客さん』という本と合わせて、感想を書こうと思う。

 

購入した方の本は『星のタクシー』というタイトルで、『春のお客さん』同様、空色のタクシーシリーズの、短編集だった。こちらも、やっぱり素敵だ。空色のタクシーシリーズは、松井さんという運転手さんが、さまざまなお客さんをタクシーに乗せて始まり、目的地に送り届けるまでの話を綴った短編作品である。そのお客さんというのが、本当にさまざまで、動物だったり人形だったりする。

 

 

 

だからといって突飛な話でもなくて、予想外のお客さんを乗せた松井さんは、当然驚きもする。けれど、お客さんを大切に思う気持ちが一番で、むしろ気がついてしまったことに、申し訳なさそうにしていることもあるのだ。お客さんが笑えば松井さんも笑うし、お客さんが歌えば松井さんも歌う。だから、この本を読んでいると、心が温まるのだろう。

 

子供の頃の記憶を美化していたわけではなく、本当に空色のタクシーシリーズは、綺麗で温かい話だった。その話を作り上げている、言葉の一つ一つも、とにかく繊細で綺麗だと思う。子どもにも分かる表現だけで、こんなに短い文章だけで、どうして心を打つ話を書けるのか、もしできることなら、会って話を聞いてみたい。本当は会えるだけでも、夢みたいだけれど。

 

二冊の中でも特に印象深いのが、『星のタクシー』に収録されている『ほたるのゆめ』という話と、『春のお客さん』に収録されている『きりのむら』という話だ。この二つの話は、ただ綺麗なだけでなく、少し怖くなるような終わり方をする。だが、きっと子供の頃に読んでいたら、さほど怖くないのではないかと思うのだ。昔の記憶に閉じ込められる、というか、過去に呼ばれるような気持ちは、子供の頃ではそこまで分からなかった。

 

けれど、やっぱり児童書は子供のもので、大人の方が理解できる、なんていうことはないかもしれない。子供の頃に、国語の教科書で『しろいぼうし』を読んだときと、今とでは受ける印象が変わってしまいそうだ。あのとき読んだ『しろいぼうし』は、作中でタクシーの中いっぱいに広がる夏みかんの香りが、読んでいる間ずっと私を包んでいる気がしていた。なら、今はどうなのか。

 

実は、『星のタクシー』にも『春のお客さん』にも、『しろいぼうし』は収録されていない。うっかりではなく、わざと読まないようにしているのだ。別に難しい理由はなくて、美味しいデザートを後に残しているような気分になっているだけである。図書館にあることは分かっているので、近い内に『しろいぼうし』も借りに行く予定だ。

 

本を開けば、また夏みかんの香りを思い出せるだろうか、と、ちょっとだけドキドキしている。

 

(20代女性)

 

 

 

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