読書感想文「ツバキ文具店(小川糸)」

小川糸さんの本は、『食堂かたつむり』以来のファンであり、『ツバキ文具店』はNHKでドラマ化されたので観ていたが、非常に面白かったので、そのドラマ原作を読むことにした。鎌倉が舞台なので、鎌倉の実在する寺院、飲食店、通りなどが話の中に出てくるので、実際に何度も鎌倉に行ったことがある鎌倉好きとしては、明確なイメージを持ちつつ、読み進めることができた。

 

読んでいる間は鎌倉に実際にいるような感覚が味わえ、読み終わった後は鎌倉に遊びに行きたい気持ちが湧き上がった。主人公に関わってくる登場人物たちも魅力的で、生き生きとしていおり、主人公に負けない存在感があった。お隣に住んでいる人生を楽しんでいるバーバラ夫人、昔からの長い付き合いの男爵、パン好きで学校の先生をしているパンティーなど、それぞれが丁寧に描かれている。

 

代書の依頼を受けるたびに、依頼に合った紙や文具、切手を選ぶシーンでは、手紙に込める想いや想いを表すための工夫に感心した。最近自分自身は紙の手紙を書くことはなくなってしまったが、メールで気軽に送るのではなく、相手に合わせて時間をかけて手紙を書くのは、本当に伝えたいことがある際には相手の心に訴えかける有効な手段なのだなと思った。

 

まずは、あまり送らなくなってしまった年賀状でも、大事な人にだけは時間をかけて手書きで書いて送ろうと思った。代書屋を祖母から引き継いだ主人公の祖母との長い間の確執、祖母が書いた手紙から主人公が知った祖母の想い、祖母が隠していた嘘など、主人公が祖母が亡くなってしまった後に誤解が判明するシーンには泣けてしまった。

 

主人公が代書の依頼を実行する上で依頼人の人生に触れ、理解していく中で人間的に成長していく。一度は祖母に反発して家を出てしまった主人公が祖母の葬式をきっかけに鎌倉に戻り代書屋を引き継ぎ、自分にしかできないことを見つけ、代書屋で自分の新しい立ち位置を見つけられたことに、心からほっとさせられた。

 

(40代女性)


 

 

 

 

主人公の鳩子は手紙を書く代行をしている。心を込めて仕事に当たっている姿を垣間見ると、私も誠意を持って仕事をしようと励まされる。また、この本を読んでいると自分も誰かに手紙を書きたくなる。一話ごとに実際に書いた手紙の全体が出ているのだが。依頼人に事情をよく聞き、それに合わせて字体や文体を変えているのが良く分かる。

 

鳩子が本当にいろいろと工夫していることに感心するのである。また、鎌倉の街に行ってみたくなる。この小説を読んでいると、鎌倉という町がとても素敵な所だと言うことが伝わってくる。それに、本当にツバキ文具店があるのではないかと思ってしまうのだ。出来ることなら、ツバキ文具店に入って大切な人への手紙を鳩子に書いてもらいたいと思う。

 

鳩子に出してもらったお茶を飲みながら、大切な人との思い出話を聞いてもらって良い手紙を書いてもらいたいのだ。本音を言えば、ただただ鳩子と友達になりたいのかもしれないのであるが。鳩子の家のお隣のバーバラ夫人も大好きになった。年齢の割におしゃれであり、何より心が若いのである。そして、鳩子の心に響くような言葉を時々口にするのだ。

 

悩んでいる鳩子が、「バーバラ婦人は、今までの人生でもっとも幸せだったのっていつですか。」と聞くと、「今に決まってるじゃない。」とすぐに答えたのだ。その一言で鳩子もそうだなと心から思うのだ。こんな風に良い近所付き合いができる鳩子をうらやましいと思うのである。また、こういう人間関係が築ける鳩子の素直な人柄にも惹かれるのだ。

 

今は亡き先代との関係を今も悩みつつも、他人の手紙を代行して書くという大変な仕事を丁寧に続けるうちに、成長する鳩子の姿が胸を打つ。様々な人と接することによっても成長できたと思うのだ。先代がどれだけ自分を愛していたかが徐々にわかってきた鳩子は、最後に先代に宛てて長い手紙を書くのである。

 

直接は話すことができなくなったしまったが、自分も代書屋になって、これからも代書屋として生きて行く決心を表したことで、鳩子の心は充分に伝わったのではないかと思うと涙が止まらなかった。

 

(40代女性)

 

 

 

 

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