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読書感想文「れんげ荘(群ようこ)」

「れんげ荘」の読書感想文①

私の大好きな小説、「れんげ荘」についてこれから書いていこうと思う。著者は群ようこさん。ハルキ文庫から出版されている、それ程厚くない小説である。表紙は手描き風でれんげの花と蝶々の飛んだイラストが描かれ、素朴でシンプルなもの。そしてその小説の内容も、表紙と同じく素朴でシンプルでほっこりするものだ。
 
主人公の「キョウコ」は有名大手広告代理店に勤めていたが、長年の深夜までの激務とお愛想に嫌気をさし、お金を貯めて四十五歳で早期退職。(私から見たら)毒親と思われる母親の住む実家を出て、都内の築四・五十年は経っていると思われる、「れんげ荘」という家賃三万円の安アパートで一人暮らしを始めた。それからキョウコは働かず、ひと月十万円の生活費を貯金から引き出し生活する。
 
もう、この小説の設定だけで私はワクワクした。バブルが弾けて長いこと不況が続いている日本では、キョウコのように物質主義から脱して、心の平穏を一番に考えるようになった若者が増えていると思う。私もそうだ。車も手放し、自分でも小さな賃貸マンションでシンプルライフをしている。
 
そして主人公のキョウコは取り立てて何をするでもなく、家事をしたり、買い物したり、散歩したりと日常を過ごしている。そう、この小説はこれといったドラマがある訳ではない。しかし「れんげ荘」の住人がまた魅力的なのだ。還暦過ぎのオシャレなクマガイさんとう女性。
 
自称「旅人」の外国人好きコナツさん。小料理屋で修行に耐えているサイトウくん。大きなドラマはないが、日々の小さな人間ドラマがそこにはあり、それがリアルに想像出来る。私はクマガイさんのファンで、こんなカッコいいおばちゃんには憧れる。そしてキョウコはクマガイさんと立ち話したり、たまに食事にも行ったりする仲になるのだが、親しくなっても付かず離れずのベタベタし過ぎない、お互い干渉せず、かといって気遣いを忘れない大人の関係がとても良いなと思った。
 
この「れんげ荘」を読むと、癒されると同時に勇気ももらう。いざとなったら自分の考え次第で、月十万円でも心穏やかに平和に暮らせるのだと。そりゃオンボロアパートで物語の中でも不便は色々あり、そこは読者として面白おかしく読んでいるのだけれど。
 
そしてこの小説には実は続編がある。その名もタイトルはズハリ「働かないの」。すっかりれんげ荘での生活にも慣れた、キョウコのれんげ荘での続編である。こちらも読んだが、れんげ荘にも小さな変化が起きたりとまた面白かった。更なる続編が出ないか楽しみにしているところである。
 
(30代女性)

「れんげ荘」の読書感想文②

群ようこさんの小説「れんげ荘」は主人公のキョウコが広告代理店を辞めて、月十万円で暮らす話である。キョウコが自分の終の棲家に選んだところは都内にある風呂なしのおんぼろアパートだが、そこに移る前の生活は朝から夜遅くまで拘束時間が長く、休む暇がないものだった。
 
都内のアパートの家賃はピンからキリまであるが、部屋に風呂や台所がついているとその分高くなる。給料の25%の家賃は一人暮らしの常識であり、その額を超えるとたちまち苦しくなる。キョウコはそれを考えたうえで「れんげ荘」を選んだのであろう。
 
れんげは可愛い花で、花言葉は「心が安らぐ」だ。これからの生活を安らかで楽しいものにしたいと考えると、このアパートを選んだ理由の一つが名前も関係しているのではないかと思えてくる。キョウコは45歳で管理職についていたが、毎日の生活に限界を感じていた。
 
家にいても母親が何かと干渉してきて鬱陶しい。私はキョウコのような生活は出来ないが、彼女の計画性には頭が下がる。退職した後の生活で何が必要なのか考え、月十万で残りの人生の生活を賄うだけのお金を計算したうえで貯金をしていたのだから。母親の事は兄夫婦が一緒に住んで面倒を見てくれるし、一人暮らしの方が自分の時間を好きに使えそうだという所もあったのだろう。
 
一人暮らしは経済的にも精神的にも自立している事が条件の一つだが、計画を実行に移すのは簡単ではないと思う。キョウコは世間から離れ、自分一人で楽しい生活をしたかったのだと思う。れんげ荘に移ってからのキョウコは自分が思い描いていた通り、自由気ままの生活をする。
 
アパートの他の住人は六十歳を超えた年齢のクマガイさんという女性や自称「旅人」の若いコナツさんという女性など、親切だけれどどこか適当な人達と交流をするようになるが、部屋でお茶を飲むひと時や近所の散歩、買い物など親近感を覚える所がたくさんあって面白い。一人暮らしは日々の生活を楽しむセンスがある人にとっては、理想的な生活だと思う。
 
(40代女性)

「れんげ荘」の読書感想文③

この作品はここ数年、何度も読み返している。大好きな小説だ。主人公の女性が同年代で共感できるところも大きい。働かずに質素な暮らしをしていくその姿に、羨ましいとさえ感じる方も多いと思う。私もその1人だ。とにかく、40代女性は、様々な生き方があって、びっくりする程忙しい人達ばかりなのだ。そして、体力の衰えも無視できない年代だ。高齢出産された方は、育児に追われる毎日だと思う。
 
子供を産んで働き続ける女性が増えている現代では、猫の手も借りたいくらいの状況だとよく耳にする。また、キャリアで生きている女性達も同様だと思う。実力のある方はどんどん昇格し、責任も増えて時間が足りないと嘆いているみたいだ。まだまだ男性優位社会の日本では、女性にかかっている負担は何かと重たいのだと感じる。結婚、出産と育児、仕事、そういったことから全く関わらない別世界が彼女の生活には広がっているのだ。
 
質素な暮らしではあるものの、たくさんある時間を自由に使うことができる贅沢な生き方でもある。そして、現代の女性達が縛られている色々なことから解放されている、その状況も魅力的に感じられる。結婚して夫がいること、出産して子供がいること、仕事を持っていること、たくさん持てば持つほど忙しさが増し、幸せを感じる暇さえなくなっていくのではないだろうか。
 
持たないくらしからは、本当にささやかな事が新鮮で喜びにつながるのだと思う。あれも欲しい、これも欲しいという人間の願望は幸せを邪魔させているのだ、と読みながら気付かされる。彼女のようにすっぱりと方向転換できる人はなかなかいないと思う。しかし、期間限定でもいいから彼女の暮らしを体験してみたいと思うことがある。
 
さらに、質素なくらしにも、泥臭い大変なことが色々と書かれている。そういう現実的な世界観もかなり楽しめている。どういう生き方を選択しても、大変なことは必ずつきまとうと感じた。質素なくらしから何だか元気がもらえる不思議な感覚になれる作品だと思う。
 
(40代女性)

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