「人はなんで生きるか」の読書感想文
この本には、数編のトルストイの民話が収められている。読もうと思えば子供でも読めるかもしれない小さな本だが、これほど心に深く響いた本は初めてだと思う。温かい心を持ち続けることの大切さを改めて教えてくれる素晴らしい本である。この本の題名になっている「人はなんで生きるか」では、貧しい靴屋の主人公セミョーンが、天使のミハイルと出会う。
もちろんはじめは天使だとは分からない。裸で道で動けなくなっているミハイルの前を、気味が悪いので一旦通り過ぎる。私もきっと、知らん顔をするだろう。しかし、セミョーンは心が咎め、また引き返してミハイルを家に連れて帰る。この行動でミハイルは救われるが、それ以上にセミョーンも救われることになる。
困った人を見て素通りしても生きていけるだろうと人は考えがちだが、この話を読むと慈悲心を失くすことは、人間として生きていくのが難しくなるとも言える気がしてくる。私はあまり気が強いほうではなく、人との付き合いで、どこまで相手のことを考えればよいのか悩んでしまうことが今まで多かった。
もっとドライにしていないと、馬鹿にされるように思ったこともよくある。しかし、人を思いやる気持ちは自分のためにも最も大切にしなくてはならない…いや大切にして良いものだと、はっきり思わせてくれる内容で、このお話に出会えて本当に良かったと感じている。
また、この中の民話でもう一つ「愛のあるところに神あり」がある。このお話では、生きることに疲れた主人公の不思議な出会いのシーンに、心がジーンと温まるのを感じた。何のために自分は生きていけばいいのか,,,主人公のマルツィンのように、私も悩むことがある。
しかし、そういう悩みには、自分がもっといい思いをしたいとかもっとこうなりたいとか、自分のことばかりを考えたものが多くないか?とトルストイに問いかけられるのだ。すべてではなくても、悔しいけれどその通りに感じた。このお話も、もっと自分の前に現れるいろんなことに注意を払い、出来るだけのことはやっていこうと思わせてくれる素晴らしいお話しだった。
今後も、自分が生きていく中で何度も読み直したいと思っている。また、トルストイの本は難しくて読めないと思っている方がいたら、ぜひこの民話集を手にとってみてもらいたい。
(40代女性)
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