読書感想文「雨の日も、晴れ男 (水野敬也)」
この本を読みながらつい口に出してしまった。「そんなあほな!」と。同時に笑いがこみあげてきて吹き出してしまった。一日でこんなに次から次へと災難が降りかかって来たら、私なら自分の運の悪さを呪うだろう。そして、これは夢じゃないかと現実逃避してしまうはずだ。
なぜなら普段から仕事での小さなミスや、ちょっとした不運でさえも長々とへこみ、平気そうな顔をしながらも心の中では「こんなはずじゃなかった」と自分の行動を後悔し続ける性分だからである。そしてつい、誰かや運のせいにしていまう。しかし、この主人公アレックスは異常なほどのポジティブさでどんな不運も笑いに変えてしまうのである。
自分の夫がこんなに楽観的だったら、即離婚してしまうだろう。しかし、読み進めていくうちにそんな姿がとてもいじらしく、そして愛らしく思えてくるから不思議だ。どうして彼は、嫌がらせを仕向けている神達の心を動かして、最後には味方につけてしまえたのだろうか。その答えはシュナの最後のメモにあった。
私はその答えを理解したとき、ストンと府に落ちるものがあった。「神はただ、出来事を起こすだけ」それは事故や災害、詐欺など世の中の理不尽な出来事全てがそうである、と言えるだろう。あと少し時間がずれていれば、あの時違う決断をしていれば、とつい私は避けられたかもしれない、という過程で、後悔をしてしまう。
けれど、残念ながら不運は人や場所を選ばず誰にでも訪れる可能性がある。しかし、そこから立ち直れずに潰れてしまうのも、それを武器にして這い上がるのも、全ては自分次第なのだ。アレックスは不運を自ら笑いに替え、そして同時に相手をも楽しませてしまうという優れた才能を持っていた。「ただのバカ」と言ってしまえば、簡単だ。
しかしその才能が私にはとても眩しく羨ましく思えるのである。人が楽しむ姿を見ることで、自分も楽しくなる。そうすれば楽しい人は2倍になる。こんないいことはないではないか。私はこの本を読み終えてからいつも頭の片隅に「相手のことを楽しませる」という言葉を頭に思い浮かべるようになった。
いつでもアレックスのように出来る訳ではない、とわかっている。けれども、ほんの少しでも肩の力を抜けばもっと自分の人生を楽しむことが出来るような気がするのである。
(40代女性)
文藝春秋 (2008-06-10)
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