「マドンナ」の読書感想文
私にとってこの短編集は「お父さんってそんなこと考えていたのか」と衝撃を受けた一冊だった。
会社に勤めること、サラリーマンの妻になること(自分が働く、働かないに関わらず)がどういうことなのかを学ぶことができた。私の父は会社勤めではないので、こういう世界とは無縁だったから尚更新鮮だったのかもしれない。本文を引用しながら、私が心を動かされた部分を3つ紹介しようと思う。
『四十二歳の春彦は結婚して十五年になる。その間三回、部下の女を好きになった。』この部分がいちばん私にショックを与えた文章だった。これが珍しくないことであるかもしれないと思うと、周りの男性に対する意識が変わってしまった。お父さんみたいな人だ、と安心することは避けた方がよいのかもしれない。
『みんなの前で飯島が芳雄を昼食に誘い、それで仲直りをアピールした。』気が重くなる一文だった。大人の世界ではけんかをすると(まるで国家間の関係のように)周りにアピールする必要があるということは、私にとって知りたいことではなかった。しかし、知ってしまったからには、こんなことがもしもあったときのために心にとめておこうと思う。しかしこのような仲直りの仕方は気分が良くない。会社の息苦しさの一面が見られたような気がする。
『「能力がない奴は家で雑巾がけしてろ、外で働くのはおれたち有能な人間だ、そうやって決めつけるのが能力主義。あなたのことよ。」』妻から言われたこの言葉には一瞬どきりとした。なぜなら私も有能な人間が高い給料をもらってよい環境で働くことは当たり前だと思い、疑ったこともなかったからだ。ですが例えば、子どもがいたならば子どもが大きくなって進学するにつれてお金が必要になってくる。そんな当然のことを改めて考えさせられた。
この3つの部分のほかにも心が動かされた場面がいくつかあった。仕事をしているお父さん、お母さん、それを支える妻、仕事を終えたおじいさんの気持ちについて考えさせられた本だった。
(10代女性)
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