読書感想文「あこがれ(川上未映子)」

ストーリーは主人公の一人称が前半後半で変わる。まず前半は小学4年生の男の子の視野で描かれていた。まだとてもピュアで、世間の物の見方に自分の考えが侵されていない少年の考えに郷愁を憶えた。好きという気持ちも、友達に指摘されるまで意識しないその感じが懐かしい。ぼんやりとした温かい気持ちを抱いているも、それに咄嗟に名前を付けられるほどまだ大人ではない年齢だ。

 

相談した友達に、つまりあの人の事を好きなのかと指摘されて、素直にそうかと認識するのもこの少年のまだ幼さの残るピュアな心をよく表していると思った。相談相手は学校の同じクラスの女の子だが、クラスで目立っているような女の子とは一線を画しているような、多分地味目なのだがストレートで信頼できる感じ、私もこういう子がとても好きなので二人を身近に追体験するような気持ちで読み進めた。

 

後半は二人が6年生になっていて、主人公は先の相談相手だった少女に変わる。男の子の視点の話が年齢のせいもあって幼かったのに対し、こちらは徐々に大人に近付いて行っているが思春期特有の悩みなどにまだまだ弱い子どもであることが垣間見えて、ハラハラしながら二人を見守る気持ちで読んだ。

 

 

二人にはそれぞれ死別したお父さんとお母さんがいることが共通していて、でも生活環境は全く異なり、多分他の子どもたちと同じようにそれぞれに家庭の悩みを抱えている。環境は全然違うのだが、親が片方しかいないということが二人を親しくさせるのかどうかは偶然かもしれないしわからないが、ストーリーの重要なポイントではあると思う。

 

前半で主人公の行動を力付ける役割をした少女は、今度は逆に少年にずいぶん助けられる。大人びているように見える少女も、まだ弱い子どもで、思いつきで取った行動が少女の気持ちを傷つけることになったのは読んでいて切なくなった。そんなとき言葉は多くないものの、優しく少女に寄り添う少年の存在はありがたかった。そして何より私が良いなと思ったのは、二人の関係が恋のようなものにならないところだった。

 

二人の未来がどうなるかはわからないが、6年生のこの時点では飽くまで、とても大切な友達でお互い性別は意識していない関係が良かった。少年のクラスメイトの中にはもういわゆる「つきあう」ような関係を始めたがったりしている子もいるのだが、この二人は独自の価値観を意識せずとも大事にもって生きている、そんな雰囲気があるので私はとても応援したいような気持ちになった。

 

(30代女性)

 

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