「もう別れてもいいですか」の読書感想文
タイトルから想像するにハッピーな話ではないのかなとは思いながら読み始めた。長い事夫の横暴と縛り付けに悩んできた主婦が、あきらめの生活から人生の終盤に向けて自分の心を解き放つために夫と別れる話だ。
夫との家庭生活や家計維持に頑張るパートなどかなりリアリティを感じる内容だ。田舎町での人間関係も学生時代からの事を絡めて、多くの女性が共感や理解を示すような内容だと思う。家庭を持つ人間なら多少なりとも経験する互いの実家との関係も主婦の悩みとして大いに理解できる。
彼女の人間形成には実家の父母の有り様も影響していることが見て取れるが、その父母関係にしてさえ自分と夫との関係が異常なのではと気付いていく様子は、昨今言われる家庭内のモラハラなど、特に受ける側の意識についてよく表していると思う。
田舎での交友関係でなんとなくそれ以外に広がり様がなく付き合っている旧知の友人たちとの関係も、狭い社会で生きる女性の行きづらさを感じさせるものだと感じる。「ママ友」なる言葉があるが、その関係以外に女性はどんな人間関係が築けるのだろうと考えさせられる。
金銭的に余裕があれば趣味などを通じた人間系ができるだろうが、それが出来なければ狭い社会で近隣の人と浅い関係を保つ、旧知の人とうまく合わせてやっていくしかないのだろう。
彼女の生活での苦労はかなり共感できる部分は多いが、夫の言動には今もこのような人間が社会生活や家庭生活を送っているのだと不思議に感じてしまう。
彼女は徐々に友人や娘の言葉に押されるように夫との離婚に向けて動いていくが、実際の社会でも専業主婦やパートで扶養家族である女性のネックはやはりお金だと痛感する。しかし決意を固めたなら経済的な問題はなんとはなっていくもののようだ。
そのために社会の助けを得る努力は必要だと思うが、その中に現れたこれまたパワハラセクハラな弁護士には、やはり世の中には多様な人間がいるのだと思わされる。
離婚のためにはまず別居という友人の助言を得て実家へ帰る彼女だが、その妻へ向けての夫のメールの内容が家庭破綻にはこの夫有りと思わせられる。
夫の内面を知らない実家の母に離婚したいと告げた時、初めは思いとどまるようなことを言うが、夫がお金を家に入れない話に急転して娘の離婚に理解を示すところも世の多くの家庭婦人のあり様を表していると思う。
全てが共感できる内容というわけではないが、世の中の家庭問題は様々で、いろんな人間模様が紡がれているのだと感じさせられた小説だった。
(50代女性)
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