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読書感想文「まずはこれ食べて(原田ひ香)」

「まずはこれ食べて」の読書感想文

とにかく美味しいサラ飯が並ぶ小説。しかし、ほんわかしたぬくもりのある料理とは対照的に、ベンチャー企業で働く人の苦悩が丁寧に描かれている。

大学生の仲間のノリがそのまま、同僚になっているが、年頃を迎えた紅一点の女性の目線と、その女性を取り巻く男性の視点は、その人の背景や性格によって当然違う。彼らの悩みや課題に合わせて提供される家政婦の料理が深い。

料理によって、これほどまでに内面がえぐりだされていくものかと感動した。確かに、料理は五感を刺激し、記憶を呼び出すものだと、つくづく思った。目で色を味わい、匂いや香りが胸にしみわたる美味しい料理の記憶には、必ず、エピソードがついている。

また、料理は心を癒したり、和ませたりするものであると感じ、日ごろの手抜き料理を反省するきっかけにもなった。婚約者のために転職を考えている要領のいい若者、リーダーの秘密が章を重ねるたびに明らかになっていく。

いくつもの伏線が回収されていくストーリーは小気味がよい。原田作品のテンポのよさと、どこにでもある日常の中の小さな事件が化学反応していく様に引き込まれていく。一番の山場は、行方不明になっている会社の創設者と家政婦の関係が暴かれるところではないだろうか。

いつも「これ食べて」と、圧倒的な味方であったはずの家政婦がまさかのスパイであったという設定は、どんでん返しとミステリーがごちゃまぜになり、意表をついている。

この小説を読んで、適材適所という言葉と共に、人は何度でもやり直せるし、生き続けるからには、自分の長所も短所もまるごと抱え、誰かとつながって協力していく必要があると感じた。自分の職場の同僚や、家族を思い浮かべながら、一緒に食べるごはんのことも思い浮かべた。

「同じ釜の飯」という諺の意味がひしひし胸にしみてくる。「人生の最後に何をしたいですか」という問いには、「愛する家族と普通にご飯を食べたい」と、自信をもって言える自分に気づいた。

(60代女性)

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