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読書感想文「最後のひと葉(オー・ヘンリー)」

「最後のひと葉」の読書感想文

人の優しさというものは、表面からはわからない。この本を読み終えた後、そんな言葉が自然と胸に浮かんできた。古いアパルトマンに住む、貧しくとも夢を諦めない芸術家達。彼らの生活は決して楽ではないが、そこには希望が見えた。

スーとジョンジーの2人の若き女性芸術家。彼女らもまた、いつかは自分の作品を輝かせたいと考えていたに違いない。この作品は、夢を追う事の素晴らしさと悲劇を両方教えてくれた。たとえ世間から認められなくても、自分の夢を追いかける事は素晴らしい。

だが、肺炎となったジョンジーは助かる見込みがないと告げられる。だが、貧しい彼女らは寒い部屋で耐えるしかないのだ。夢を追い求めた結果がこれでは、あまりにも可哀想すぎる。あえて若いジョンジーが病に倒れる事により、理想と現実の厳しさを教えたかったのかもしれない。

医者の言葉を聞いたスーが、ジョンジーには悟られまいと明るく振る舞う姿。だが、言葉だけの明るさや優しさは、塞ぎ込んだジョンジーには届かなかった。なぜ、スーの優しさがわからないのだろうと読んでいて腹ただしく感じる場面も多々あった。

だが、もし自分がジョンジーだったらと思うとその気持ちも理解できた。きっと、希望を持つ事は難しい。葉が落ちたら自分も逝くと言ったジョンジーは、一見すると諦めたような気持ちにも見える。だが、ジョンジーだってきっと希望を見いだしたかったに違いない。

心のどこかで、葉が落ちないでほしいと祈っていたに違いない。目の前で弱っていくジョンジーを、ただ見ているしかできないスーの切なさも相まって胸が切なくなった。だからこそ、ベールマンの態度は許せなかった。

ジョンジーが唯一の希望としている最後の一葉を馬鹿げていると罵った彼は、冷酷で無神経だとしか思えなかった。だが、違った。彼ほど優しい人間は、おそらくどこにもいないだろう。ジョンジーが奇跡的に助かったのは、最後の一葉が嵐の中でも落ちなかったからだ。

激しい雨風に晒されながらも耐えた葉は、生きる気力を再び与えてくれたのだ。その一葉が、実はべールマンが描いた最後の絵だと知った時に彼の本当の姿を見た気がした。おそらく、彼はジョンジーの希望を消したくなかったのだ。

だから、誰にも知られずに立った一人で壁に1枚の葉を描いた。言葉で相手を励ましたり、叱ったりする事は簡単だ。だが、本当の優しさとはそうではないのかもしれない。いつか傑作を描くと豪語していたべールマン。

彼が最後に描いたのは、絶望を希望に変えるという素晴らしい傑作だった。雨の中で必死に絵筆を走らせた彼は、何を思っていたのだろう。もしかすると、自分が亡くなっても若き芸術家を生かしたい。それこそが、彼の希望だったのかもしれない。

小学生の頃、教科書でこの本を読んだ時には特に感動はしなかった。だが、大人になって改めて読むと人間の心の揺れ動きが落ち葉で表現されていたように思える。べールマンの傑作は、煉瓦の壁に永遠に残る事だろう。そして、多くの若き芸術家に希望を与えるに違いない。

(40代女性)

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