「タスキメシ 箱根」の読書感想文
春馬と早馬兄弟の高校大学時代が描かれたタスキメシの続編で、楽しみにしていた作品。これは2020年の箱根駅伝の物語で、フィクションなのはわかっているのに、どこかでこんなドラマが起こっているに違いないと思わせる熱さがあった。
これを読んですぐ2020年の箱根駅伝を見たら、思わず彼らの姿を探してしまったし、色んな思いが重なって、気がついたら手に汗握りながら選手達を見守っていた。箱根を目指したり、その夢が大きすぎて諦めたり、仲間の言葉に励まされたり、後輩の成長に焦ったりと様々な感情が入り混じりそれが走りに繋がっていくというのが、とにかく熱い。
自分は走ることとは縁がないけれど、走ること以外では味わったことのある感情ばかりで、涙が止まらなかった。強豪校を目の前にして、無名の自分たちが「箱根行くぞ」という言うことの現実味のなさから、本気になっていく様子、そして本番の緊張感まで一気に読んで気持ちが持っていかれた。
頑張るスイッチが全開になったところで、「努力は裏切る」という残酷な現実がそこにはある。何度もその言葉は繰り返される。自分には才能も何もないように思える時もあれば、強い人が羨ましくなる時もあり、努力する意味や何を目指しているのかが分からなくなることもある。
それでも、色んな気持ちに打ち勝って立ち向かう千早の姿と、ひと回り大人になった早馬の姿が眩しかった。どこの分野にもいる天才肌で努力しなくても何でも手に入れているような人に、とても憧れている自分がいるけれど本当のかっこよさってそういうことではないんだと思う。天才肌と思える人だって、表に出さないだけで人の何倍も努力しているはず。
上手くいかなくたってかっこ悪くたって、悔しがりながらぐちゃぐちゃの思いを抱えながら前に進んでいけば、その姿こそかっこいい自分になっている気がする。努力は裏切るかもしれないけど、結局頑張るしかないんだ。そんなことに気付かされた。一言では言い表せない、上手く言葉にならない思い、というのが丸ごと伝わってきて読み応えがあった。
(20代女性)
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