読書感想文「大いなる眠り(レイモンド・チャンドラー)」

フィリップ・マーロウものの第一作目だがこれまで他の作品は読んできたものの今回初めてこの本を読了した。マーロウもまだ若く知り合いの検事など登場人物もシンプルで読みやすかったがやはり最終的にはあの人は誰に殺されたのかな?という疑問は残った。

 

スターンウッド家お抱えの運転手で姉妹の妹に狂おしいほど愛を支えていた青年は結局どういう経緯で亡くなったのだろう。彼の人物描写があまりなかったが最初にこの青年が死亡した姿で発見されてから次々に人が亡くなって物語が展開していって少し辛くもあった。これぞフィリップ・マーロウといったところか。

 

 

 

スターンウッド将軍が手もつけられないほど奔放で破壊的な姉妹についてマーロウ相手に語る時に自分が高齢になってから出来た子どもとの関係やかつての栄光など微塵も残っていない老衰した自分自身の姿を「成れの果て」と表現した一言が(とは言えこれは日本語訳だが)人生の重みを感じさせられた。

 

確かに彼の教育は行き渡っていないどころかこの姉妹は女性の私でも読んでいて腹が立つ性格の持ち主だなと思う。マーロウが姉に真相を聞きだそうとキスを利用したり妹の誘いをきっぱりと断って苛立つ部分は共感せざるを得ない。結局は文明化に従い秩序やモラルを失っていく街で陰の勢力には反抗できない社会システムがあるという小説内現実は小説外、つまりリアルな世界での現実でこそあるのではないかと思う。

 

札束さえ渡されれば何だってやる男、都合よく男を振り回し甘い汁を吸う女、それぞれの思惑がぶつかり合った結果死ぬ羽目になる複数人の被害者。しかしこの被害者たちさえも決して褒められた人格の持ち主ではないという過酷な現実。マーロウはいつもの淡々とした調子で己の信念を貫き己の美学に従い調査を進めてくれて、それが読んでいて安心感があった。

 

一作目なだけあってまだまだ彼も若く無茶も散見されたがどのような経過を辿ってシリーズのマーロウが円熟していったのかが興味深く垣間見れた。

 

(20代女性)

 

 

 

 

大いなる眠り (ハヤカワ・ミステリ文庫)
レイモンド チャンドラー
早川書房
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