読書感想文「長いお別れ(レイモンド・チャンドラー)」
この本は本当に男のダンディズムを描いた名作とも言えるハードボイルド小説だ。この小説の主人公フィリップ・マーロウは男っぽくて権力に屈さず、思いやりがあり、友情を大切にする、男なら誰もが憧れる人物だ。
このマーロウがたまたま出会ったテリー・レノックスは優柔不断なところはあるが、誠実で男らしいところがあり、マーロウとはすぐに打ち解け、親友のような仲になる。そしてこのテリー・レノックスが大変な事件に巻き込まれ、それをマーロウがなんとかして救おうとするという話なのだ。
しかし、ところどころにミステリーがちりばめられ、推理していく楽しさはもちろんのこと、古き良きアメリカの粋な人たちや文化があちこちにちりばめられており、経済、ファッション、娯楽など様々な面において世界の最先端を行くアメリカも昔は昭和時代の日本のように人に対する思いやりや義理人情に厚い。
まるで昭和の頃の日本時と変わらぬ愛すべき国だったのだなとつくづく感じた。ただし、ところどころに出てくる、クールでオシャレなアメリカ文化には今の若い人にもグッとくるところはあると思う。例えば、粋な男はバーをこよなく愛し、そしてそのスタイルを大切にする。飲むお酒にもこだわりを持ち、それが自分のステイタスとなる。
今の日本にここまでプライドとこだわりを持つ大人がどれだけいるのだろうか。私も昔からバーが好きで、好きが高じてバーで働いたり、自分でシェーカーと何十本のリキュール、ウイスキー、ブランデーなどを購入し、レシピ本をもとにカクテルを作って友達にふるまったりしていた。
そしてタバコも常に自分の吸う銘柄を決めていたものだ。話が逸れてしまったが、この小説では最終的にマーロウがレノックスを最終的に救うことになるのだが、それまでの間にもところどころ、ワイルドで粋な男たちが登場し、時にはマーロウやレノックスを助けてくれる。
この本は一見ミステリー小説のようだが、実は日本で言えば、藤沢周平や池波正太郎の時代小説のような人情本のようなものだと私は思っている。
(40代男性)
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