読書感想文「息がとまるほど(唯川恵)」

タイトル通りこの小説を読んでいると「息がとまるほど」息苦しさを感じる。ただそれは読んでいる事が不快なわけでは決してなく、自分自身がシチュエーションは違えどこの小説に出てく女達と重なる部分があるからだ。この恋愛小説は単に恋愛は楽しい、幸せ、愛とは美しい。恋愛とはこうあるべきなのだ。と訴えてくるものではない。

 

女性なら誰しもが持っている「陰」の感情を突きつけてくる。決してハッピーエンドにならない主人公達。わかっていながらどんどん読み進んでしまう。8つの短編で構成されているのでテンポ良く読み進むことができる。最終的な結論に辿りつかず終わることもあるのだがそこもとても良い。それぞれの女達が今後どういう人生を辿るのかを想像するのがとても面白いからだ。

 

 

 

悲惨な結末であってもなぜか納得してしまう。現実味があるからだろう。女性の嫉妬ややっかみ、自尊心や、承認欲求そういったもが渦巻いている。女性ならば誰しもが感じたことのある感情、だけど現実世界ではなかなか表に出せない感情をこの小説はきれいに垂れ流してくれている。30を超えた女達が、自分の人生は果たして幸せなのだろうか。

 

どこか不満を持ち、そして自分の今後の人生に不安を抱えている。若くもなく、歳をとってしまったわけでもなく、しかし結婚や恋愛となると急に弱い存在に感じてしまう。実際のところそれが事実なのかは知らないが、私には彼女達の気持ちが痛いほどわかるのだ。それなりの経験をし、多少の知恵も付け、それなりの恋愛もしてきた。

 

しかし知れば知るほどどんどん理想が高くなり身動きがとれなくなってしまう。自分自身の社会的価値もある程度把握できているつもりなのにどうしても諦めきれない理想と現実。息苦しくてたまらない。周りから見た彼女達は決して幸せではないかもしれない。しかしそれは恋愛という側面から見た彼女達に過ぎない。彼女達は実は強い。

 

そう、小説の中の女達は傷つきながらも、必死に図太く生きている。どうしてこの小説を読み進んでしまうのか。それはきっと彼女達と共感してしまい、そして彼女達と同じように私自身も現実を受け入れて戦わなくてはいけないのを知っているからだ。この小説を読み終えた時、同志を見つけた様な気がした。

 

(30代女性)

 

 

 

息がとまるほど (文春文庫)
文藝春秋 (2012-09-20)
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