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読書感想文「ふたりの花見弁当 食堂のおばちゃん(山口恵以子)」

「ふたりの花見弁当 食堂のおばちゃん」の読書感想文

待ちに待った『食堂のおばちゃん』シリーズ第四弾が発売された夏の暑い日、いつもどおり一気に読み終え、これまたいつもどおり読後は温かいほっこりした気分になり、なんだかお腹も空いてきたような気がした。
 
姑の一子と嫁の二三、バイトの万里が営むアットホームな「はじめ食堂」を舞台に、本作でも常連さんや家族にまつわる短編が5作品、今回は食堂のメニューのみならず、おせちやお花見弁当、そしてシリーズ初めての外食エピソードも織り交ぜられ、いつも以上に食欲中枢を刺激される作品になっていると感じた。
 
シリーズ四作目ともなると、登場人物みんながそれぞれ年齢や経験を重ね、特に一子や同世代の常連さんは否応なしに老いと向き合わざるを得ない場面が出てくるが、事実は事実として受け入れながらも決して悲観することなく、抗いすぎず、生き方の信念は曲げずに今を真剣に生きる姿に感銘を受けた。  
 
特に気に入ったのは「ふたりの花見弁当」で、一人暮らしの常連の三原さんの自宅マンションにはじめ食堂の面々や常連さんたちで訪れ、お花見をし、三原さんの今は亡き奥さんとのお花見の思い出話にみんなで耳を傾けるシーンには思わず胸が熱くなった。
 
三原さんの奥さんがこしらえていた地味ながらも心のこもった飽きのこないお弁当、料亭が腕をふるったお弁当、おそらく来年のお花見で一子や二三、要が腕をふるって作るであろうはじめ食堂のお弁当、それぞれに良さがあり、それぞれがかけがえのない思い出に色を添えるであろうことは間違いない。
 
一子の言う「空腹は最高のソースって言うけど、思い出も同じくらい最高のソースだから」にも至極納得した。はじめ食堂のお料理が美味しいのは、味もさることながら、店を営む面々とお客さんの人柄と関係性が、日々かけがえのない思い出を作っていっているからにちがいない。
 
私の地元にはじめ食堂があれば、毎日は無理でもせめて週イチペースで訪れて、パワーと、生きていることの楽しさをいただけるのではないかなぁといつも思う。そしてこのシリーズがどうかいつまでも続くように、心から願いばかりである。
 
(40代女性)

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