「ミッキーマウスの憂鬱」の読書感想文
最初のとっかかりは、この小説が東京ディズニーランドを舞台にしているということで、手にとってみました。もちろんかなり詳細なヒアリングの上で、舞台設定がされていますが、かなりフィクションの部分も多いので、そのような意味でも、東京ディズニーリゾートを夢の世界という視点さえあれば、東京ディズニーリゾートにくわしくなくても、十分楽しめる小説である。
最初は主人公のダメさ加減に、元キャストとしては、「こんな主人公では採用されないだろう!」とすぐにツッコミを入れたくなり、肯定的な感情ではなく、否定的な感情移入になってしまい、読み続けるのをやめようかと思いましたが、多くのキャストに支えられ、また主人公自身の正義感の強さと無知さで数々の場面を乗り越えていく様子は、エンターテイメントという視点で楽しませてもらえました。
東京ディズニーリゾートという壮大な舞台装置をつかいながら、話は進行していくのですが、誰もが知っている東京ディズニーリゾートですから、「あっカリブの海賊の前だな」「パレードの始まりの場所だな」と想像しながら、まるで自分がその舞台に立っているかのように、小説を読み進めていけるのは、とても共感しやすい部分でした。
一方で、ゲストが本来知ることのできないバックヤードの部分は、正確な描写のある部分と、まったく実際とは違うフィクションの部分が入り混じっている部分があり、そこも、想像力を掻き立てられます。ただ、この小説の中心テーマは、「常勤職員」と「そうでない職員」との階級の差から生まれる絶対的な「壁」を取り扱っている。
これは東京ディズニーリゾートという世界を使いながら、実際の私たちの現実社会の課題をクリア―にして、問題提起してくる部分でもあり、読み終えた後に「階級による差別が生み出す不利益」を考えさせられることになります。そして、その不利益を壊すのは夢でも、魔法でもなく、主人公や仲間である「人」だという強いメッセージが最後に届いてきます。最後はやはり人なんだと。楽しませながら、問題提起も忘れない、夢と現実をいったりきたりできる小説でした。
(40代男性)
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