小説の中でも、森博嗣の作品が最も好きだ。というのも、その情景のテイストと文章構成のマッチングが最高に感じるからだ。中でもこの『銀河不動産の超越』は突出していて好きだ。基本的にミステリが多いのに、文芸的であり私小説であり物語にもなっているのだ。主人公の行動が自分の若い頃の事と非常にリンクして感じるのがポイントだ。
就職活動の時、大学を出て特に理由もない状態で社会に投げ出されるのだが、私は会社、や組織に何ら希望も特徴も持ち合せていなかったので、路頭に迷ってしまったのだ。この小説の主人公は、誰も行きたがらない会社に入るのだが、そこのノリが良いのだ。自分もそんなノリで就職出来たら良かったのにな、とついつい悲観的に考えてしまうのだが。
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社会に適用出来ない私が、不動産会社に勤める事になる主人公の高橋に共感を得るというのは何とも奇妙な気分だが、彼の視点が自分の視点と一致している点が多いから、より臨場感が得られて楽しく読めるのである。がちがちの会社、というよりも近所のおじさんの働き口に就職したような感覚で話が進むのだ。
私の好みのキャラクタが主人公だが、特色があるのが周囲に表れるキャラクタの方だから、より際立って主人公と自分とが一致するように読めるから、小説を読んだことが無いというレベルの読者でも十分楽しめる内容だと思う次第である。アパートを借りる時にいつもお世話になる不動産会社があるが、自分だったら、とつい妄想してしまう。
本作の主人公はその代弁者になってくれたのだ。少しずつ進展していく話に、どんどんと引き込まれていくだろう。主人公はひどくお人よしに感じる人も多いのではないだろうか。そんな人がいたって良い、と私は思えるのだ。ただなんとなく生きて、なんとなく就職して、なんとなく働くのが本来の日本人の姿なのでは、と思えるからだ。
そんな理想の就職と労働を、コミカルに描いているのでこんな風に働けたらな、とついつい願ってしまう。主人公が住む事になる住居もとても奇妙だ。だだっ広い空間に一人しかいないのだが、そこから話が進む毎に奇妙な同居人や大家さんの話が転回するのだ。銀河不動産みたいな会社に就職してみたいものだ。
(30代男性)
講談社 (2011-11-15)
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