読書感想文「宮本武蔵(吉川英治)」

吉川英治著作の宮本武蔵という小説を読んだ。昭和の文豪、吉川英治の作品は没後50年が経過していることから、今ではすべて青空文庫で読むことができる。キンドルを使用しているならば、Amazonのキンドルストアから無料で購入できる。この作品に触れるのも久し振りだが、非常に楽しく読めた。以前に読んだ時とはまた異なる新鮮さを味わった。

 

本作の最大の魅力は、宮本武蔵という剣におのれの運命をたくす一人の青年の成長期を鮮やかな描写で活写しているところにある。さらにはお通、又八といった泥臭いとも言えるような普通人たちの人生模様をも見事に描き上げることで、超人・武蔵ではなく、人間・武蔵を描くことに成功しているように思える。

 

 

 

もう一つ、本作を読む際に注目したいのが、この作品は吉川英治が戦前から本作を書き始め、戦後に完結した点である。あまり世間的にはなじみがないかもしれないが、吉川英治という作家は太平洋戦争に賛同する戦争推進派の小説家であったと言われている。戦争を経験した多くの作家がそうであるように、宮本武蔵という長編の内容にも、戦前、戦後と内容に変化が見られる。

 

戦前の宮本武蔵は『強さ』を追い求め、戦後の宮本武蔵は『剣を通じてより良く生きること』を主題にしているようだ。敗戦前に書き始めた剣豪の生涯を、敗戦を経験した吉川英治の中にどのような心境の変化があったのかは分からない。 しかし、宿敵、佐々木小次郎との決着の際も、「武蔵は精神の剣」で打ち勝ったとし、強さのみを追い求める小次郎の生き方と対照的に描き出している。

 

力で制圧する剣ではなく、精神を充足させる剣への路線の変更は、吉川英治自身の心境の変化そのものなのかもしれない。 主人公、宮本武蔵も魅力的だが、又八や朱美、沢庵坊主といった人間臭いキャラクターも大変魅力的に描かれている。特に沢庵の言葉には引き込まれるような力がある。より高みを求める求道者、宮本武蔵のような青年を身近に感じるとき、久しく忘れていた上を目指す気持ちを思い出すことができた。

 

(30代男性)

 

 

 

 

 

 

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