読書感想文「閃光スクランブル(加藤シゲアキ)」

主人公であるトップアイドルグループMORESの亜希子の抱える悩みが葛藤している様子が、アイドルもサラリーマンも同じ人間なのだと思えて親近感が涌く。なぜ自分はここにいるのか、なぜ自分なのか、周りは過大評価しすぎている、と自分の人気が手の届かない領域にまで及んでいると感じる恐怖心。

 

アイドルや芸能人は皆自信に満ちていて、自分を見て欲しい、認めて欲しいという自己顕示欲や他者からの承認欲求が強いと偏見を持っていた自分に気がついた。どれだけ周りから称賛されたとしても、自分に自信が持てない。その弱い心が不倫という「この人にだけ必要とされていればいい」と思ってしまう思考に行きつき、それは考え向き合うことから逃げているだけでしかないのだと感じた。

 

 

 

自分にしか見えない悪魔がまとわりつき苦しめる。自分にはなんの存在価値もないと、自分自身がそう思い続けてしまう苦悩。不倫が相手の妻に知られ別れを告げられそうになる現実を受け止めきれず、極限状態に達しまた自分の身体を傷つけてしまう。スキャンダルのパパラッチのため尾行していた巧がなんとか助けようと、数少ない信頼できる友人たちの協力のもと亜希子と巧は愛の逃避行をすることになる。

 

8年前妻を亡くした巧は写真を撮ることができなくなり写真家からパパラッチへとなった。人間不信になり、人生に何の希望も持てなかった。そんな状況が亜希子と重なり、次第に二人は互いを理解し合い、心の傷を癒し本来の自分を取り戻していく。その関係がプラトニックであることは、亜希子が復帰後初めてのステージに力づくでカメラを撮り続ける光景の描写から受けるとことができる。

 

互いの存在を特別に思い、しかしながらそれぞれが依存せず自立している関係性が2人の絆を深めている。物理的な距離や明確な言葉などなくても、それぞれが自分と向き合い自身を持ち高め合っていける関係は、一般人である私たちにとっても理想的な男女の関係である。

 

(20代女性)

 

 

 

 

閃光スクランブル (角川文庫)
加藤 シゲアキ
KADOKAWA/角川書店 (2015-11-25)
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