読書感想文「下妻物語(嶽本野ばら)」

とてもポップで、色彩鮮やかな小説だ。無論白紙に黒インクで書かれてはいるが、呼んでみるとピンク、赤、パステルカラーといった色合いが次々と頭に浮かんでくるのだ。その理由は、この小説のキーアイテムにロリータファッションが用いられているからに他ならない。筆者もロリータ趣味を持っており時折原宿にウィンドーショッピングに出かけていたが、主人公の桃子の根性たるや毎回茨城から原宿まで遠征し、買い込んで帰って来るという熱血なものである。好きな物に貪欲でいたい、理想を追い求めたいという姿勢は一見してクールな態度と相反し、可愛らしい少女の物語の中に少年漫画的な情熱を感じてわくわくしてしまう。作中にはBABY,THE STARS SHINE BRIGHT(以下BABY)を始めInnocent WorldやJane Mapleなどロリータブランドの名称が多数登場する。トーションレースやお袖とめ、ヘッドドレスなどの用語も頻出する。知っている人はあああれね、とか持ってる!などと考えながら楽しめるし、知識のない人でもその世界の奥深さを知ってもらえるように愛らしいロリータの世界が描かれている。

桃子は後半でBABYのデザイナー業を務めることとなるのだが、自分の憧れだったものに携われる喜びを思うと良かったね、おめでとうとこちらまで嬉しくなった。また、桃子がタイプの違うヤンキー少女、イチコと友好関係を築いていく姿もとても面白い。ボケとツッコミの応酬かと思いきや特技を生かして相手のためにひと肌脱ぎ合うというやりとりは爽快感に満ちている。ロリータファッションが登場するからといって重苦しい世界でもなければ。ヤンキーが出るからといって理解不能な世界でもないのだ。喧嘩やしおらしい場面を二人で乗り越え、結果としてコメディの世界に収まる少女達のやりとりは、安心感がある。現代趣味嗜好が細分化し、好奇の目も多い時代。私も自分が他者から笑われてしまうようなマイノリティな人間なのではと不安を感じていたが、それが何だと言い切る桃子やイチコの姿、そして嶽本自身の姿勢に励まされた。

 

(20代女性)

 

 

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