〜名作が見つかる読書感想文の掲載サイト〜

読書感想文「わたしを離さないで(カズオ・イシグロ)」

「わたしを離さないで」の読書感想文①

著者である、カズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞を受賞された事、また数年前に映画化されたときに観たかったけれどタイミングを逃し、観れないままでいた事を思い出して興味を持ち購入し読んだ。もともと小説は好きな方だが、SFモノやラノベは苦手だ。
 
「わたしを離さないで」は現代の日常風な描かれ方だが、内容は少しSFのような雰囲気もあり、慣れるまでは読み進めにくいと感じた。「提供者」である登場人物たちが理不尽すぎるさだめを、ごく当たり前のように受け入れている違和感。普通の少年、少女のようなやり取りばかりなので、この先に残酷な運命を背負っていることを自覚している事をにわかには信じられない。カルト宗教のマインドコントロールを連想させられた。
 
誰かが決めた、知らないルールを自然に受け入れる事の不自然さ。思春期になると「提供者」である少年、少女たちも思い悩んだり葛藤したり未来に対する希望をもったりする。クローン人間であろうとそこは普通の人間と何ら変わりない。適わない希望に挫折するところも普通の人間と全く同じである。その先にある未来が臓器提供者として死ぬことである、というところだけが普通の人間と違う事だ。
 
そのことが明らかになっていくほどに「こんな事は正しくない」という気持ちで心がとても苦しくなるが、では正しいとは何だろう?ペットを愛玩動物として飼う事、保護という名目で犬や猫を捕まえる事、駆除という名目で生き物を大量に殺戮する事や動物実験。全てが割り切れる事ではないし、人間が快適に生活していく上では仕方ないといつの間にか受け入れてしまっている何もかもに改めて疑問を感じさせられ、苦悩させられた。
 
動物や虫なら人間の都合で殺しても良くて、人間の形をしたクローン人間には罪悪感を覚えてしまうのはなぜか?考える事を怠り、善悪考える事もしないで、ただ受け入れる事だけをしてしまっている自分に気付かざる負えない。人間とは何か?命や尊厳とは何か?もういちど深く考える必要がある。
 
(30代女性)

Audibleで本を聴こう

Amazonのオーディオブック「Audible」なら、移動中や作業中など、いつでもどこでも読書ができます。プロのナレーターが朗読してくれるのでとっても聴ききやすく、記憶にもバッチリ残ります。月会費1,500円で、なんと12万以上の対象作品が聴き放題。まずは30日間の無料体験をしてみよう!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA