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読書感想文「城(フランツ・カフカ)」

読書感想文「城(フランツ・カフカ)」

「城」の読書感想文

見えない部分で起こっている何かの影響があまりに大きく、まさにタイトルである城が靄で包まれているように、読めば読むほど話の終わりが見えてこない物語だ。いつの時代かはわからないが、まだ伯爵がいる頃のヨーロッパが舞台の話である。主人公Kは測量士と自分を名乗り、小さな村にやってきた。
 
村の奥にたたずむ城での仕事を依頼されてきたとKは村人たちに説明する。この物語にはそれほど多くない人たちが登場するが、「K」というアルファベットの表記で人物を説明するのは主人公である「K」のみである。ここがこの物語の一つ面白いところだ。
 
Kがこの物語の中心人物であるにも関わらず、Kの人柄や言動には最後まで理解しがたいところが多くあるのだ。そのことが名前をアルファベットにして、よりKという人物を不可解にさせているかのようにしている。例えば、Kが村に到着したその日の夜、村の宿屋に泊めてもらうとき。自分は城から依頼されてやってきたのだという。
 
訝しがった村人たちはそれを確認するため城に電話をする。ところが城の役人の返答は、そんなやつは知らない。である。村や城に関わる人間と、Kとのすれ違いは物語の始まりから終わりまで延々に続く。最初はこの村に住む人たちがおかしいんじゃないかと思って読み進めてみるのだが、途中からだんだんわからなくなってくる。
 
Kの言っていることがおかしいのではないか?Kはそもそも測量士なのか?どうにもこうにも話が進んでいかないのだ。Kは、村に到着した次の日には自力で城まで歩いて行こうとするが、何せ雪深い村であり歩いて行くにも自力では到底いけない。Kが城へ向かおうと試みるのはその一度きりだ。
 
それ以降は城と関係のある人物にコンタクトをとることで少しでも城に近づこうとするのだが、この作戦がどうにもうまくいかない。クラム伯爵の恋人フリーダと恋に落ちたり、宿屋のおかみと延々言い争いをしたり、小学校の小間使いになったりと、どんどん城とも測量士という仕事からも遠ざかっていくのである。 
 
私がこの本に興味をもったのは、城に行きたいのになかなか城に行けない主人公がどうやって城までたどりつくのだろうか?ということだった。冒険のような、ミステリーのような、興味をそそるはじまりだったのだ。城には秘密があってそれが関係しているのか。村に古くから言い伝えがあるのか。過去に事件があったのか。などなど。
 
一冊の本のゴールとして、推理小説で言えば犯人が誰かわかるし、恋愛小説であればハッピーエンドかバッドエンドか。ああ、終わった。という読後感が欲しくて読んでいるのである。ところが本書では、一向に城に近づくどころかどんどん関係のない人物が出てきて、延々城に行くのには関係のないことを議論しあっている。
 
しかもこの議論の場面が異様に多いし異様に長い。途方もない会話やら登場人物の心境の描写が終わったかと思うと、Kはかなりあっさりとした言い返しをする。いつもこのあっさり具合に私はびっくりするのである。皆親身になって話をしてるんだからそんな一言でさらっと言わなくてもいいじゃないの。と。ちょっと冷たすぎるんじゃないか。
 
そう、このKが何とも冷たすぎる。フリーダには一目惚れ同然で仕事もやめさせ、クラム伯爵の前からも姿を消し、何もかも捨ててKのところについてきたというのに、助手に優しくするフリーダを問い詰めるわ、バルバナスの家に一言も言わずに出ていき、それに落胆したフリーダに別れ話を持ち込むわ。フリーダが何ともかわいそうである。
 
おかみさんという信頼できる人間とも別れ、小学校の教師たちには意地悪されてでもKの近くにいたいというのに。Kに最も振り回されたのは間違いなく恋人フリーダであり、私は彼女に大変同情するのだが、Kと城の関係者は果たしてどうだろうかとなると、どちらが正しくてどちらが間違っている、とかどちらに肩をもとうかということを考えるようにはならない。
 
Kにも城にも全く共感できないのだ。じゃあこの話は一体何を言いたいのだろう?思うに、KにはKの考えがあり妥協することは一切ない。城には城のルールがあり、それを破るもの、従わないものには容赦しない。
 
個人と国家の間にある隔たりが延々とある中で、その中でも自分が納得するまで議論をしたり、誰かを納得させたり味方につけたりするK(個人)のもがく姿は、現代にも通ずるところはあるのかもしれないと思った。たとえ一人でも、強力な相手を味方につければ形勢は逆転するかもしれない。
 
一人でも見方を増やして数が増えれば国家も注目するようになるのかもしれない。そんな淡い期待をさせる一方、バルバナス一家の村八分にされる話も転がっていて、どこまでも現実的に厳しい世界を延々と描き続けている。どこまでも現実的にKの思うようにうまくいかないのだ。
 
もし自分がKだったらと考えると、測量士という職業なんてやめるか、城とは無関係の仕事に就いてフリーダと幸せに暮らすか、自分の故郷に帰るかという三つの選択肢しかないのではと思う。城の読者の多くの人がそうすると思うのに、カフカはこのシンプル極まりない選択肢を選ばずこの物語を作り上げたのだ。そしていつまでも城の周りをぐるぐるするKのように、私はこの物語についてぐるぐる考え続けるのである。
 
(20代女性)

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