江戸時代を舞台にした推理小説である本作は1917年から連載が始まった作品であるにも拘らず、現代の読者にもミステリー性だけでなく歴史的な側面から新鮮な興味を与えられる。
岡本綺堂氏の文体は非常に簡潔でありながら、当時の江戸時代の風俗や主人公やその他の登場人物の様子が現代の私達にも肌で感じられるような生き生きとした形で描写されているため、まるで江戸時代を知っていたかのような親近感を持って本著を読むことができる。
主人公である半七はもちろんのこと、登場する様々な人物たちは個性が立ちつつもその中に万人が共感できるような人間らしさも持っている、その中には同情を感じる憎めない犯人から、思わず鳥肌が立つような行き過ぎた人間というものの恐ろしさを感じさせる犯人まで登場している。
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物語上で解決していく事件に関しては、王道から奇々怪々な珍事件まで幅広く主人公は関わっていて、王道の事件は王道でありながら人情味に溢れていて読後に感動を味わえ、奇怪な事件(少女の幽霊から始まる事件など)は今読むからこそ逆に新しい話もあり終始飽きることなく読み続けられる。
今の時代よりも遥かに科学捜査力では劣っていた江戸の町で、根っからの江戸っ子気質な半七が鋭い洞察力を持ってして難事件などを地道な調査で解決に導いていく姿は誰もがお手本としたい姿勢である。
特に現在の推理小説の主人公の多くはキャラクターが独特で天才的な頭脳や超能力的要素を持ついわゆる孤高の天才型であるが、半七はそうではなく観察力や推理力が少し優れているだけの広く一般的な人物である。だからこそ読者は半七と事件を共有でき、半七が事件を解決に導いていく姿は現実の読者にとって目標とされるものになり得る。
決して特別ではない主人公が特別な事件を解決していく、その方法と言えば地道な聞き込み調査を行って、耳にした噂や事件の動機、証拠品などを整理して仮説を立ててはまた聞き込み調査するというものである。
そして最終的に揺るがぬ証拠と確信を犯人に有無を言わさず突きつけて自白を促す姿は、半七のような職業ではなくとも急成長している情報社会で様々な情報に振り回されている現代の私達にとっても理想の在り方として見習いたいものである。
(20代男性)
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