読書感想文「社会人大学人見知り学部 卒業見込(若林正恭)」

この本は、お笑い芸人のオードリーの若林正恭のエッセイ本である。まず、注意していただきたいのは、この本を読んでも「人見知り」は治らないのである。自己啓発本ではなく、エッセイ本であり、「人見知り」を克服する術はまったく書かれてないのだ。

 

エッセイ本なので、「人見知り」エピソードが書かれており、本人もこれを読んで、「人見知り」を克服するのではなく、自分の「人見知り」の部分と向き合って、面白がってほしいという意味合いのことを本文では書かれているのだ。これで、この本には、自己啓発本的な要素は書かれてないことは分かってもらえたと思う。

 

タイトルだけに引かれ、この本を買えば、ほとんどの人は損するであろう。しかし、内気な人、人見知りな人が読めば、救われるような本になっているし、結果的には、内気な自分、人見知りな自分が治ってしまう可能性があるので、自己啓発本的な働きも担ってくれるかもしれないのだ。少なくとも僕はそうである。

 

この本を読んだ後、自分の人見知りの部分を無理して直そうとせず、向き合って、面白がれるようになったのだ。自己啓発本は、「人見知り」を直す本だとしたら、間違いなくこのエッセイは、若林本人の人見知りも許し、面白がり、読んでる人の人見知りも許し、面白がるのだ。もちろん、文章そのものも面白い。

 

書く文章は、芸人の目線あっての文章だと感じるし、だからこそ、いい意味で自分の「人見知り」を許し、面白がろうと思えるのだ。僕は節目にいつもこの本を読むのだ。悩んだとき、行き詰ってるときに読めば救われ、逆に、今、自分の「人見知り」で悩まなくなってるときに時たま読めば、「人見知りで悩んでた自分」を思い出し、ちょっと笑ってしまい、結局、救われてしまうのだ。

 

私は、この本を読んで新たな価値観と考え方を手に入れた。それは、「人見知り」は直そうとせず、向き合い、面白がれるし、「人見知り」だけではなく、あらゆる自分にある欠点は、無理して直そうとしなくていいということだ。もちろん、欠点を直そうとしてもいいのだが、それが行き詰ったら、向き合って、面白がるだけでいいのだ。

 

(20代男性)


 

 

 

 

最初に言っておくと、私はオードリーが好きである。タイトルからして彼らしくクセが強く、初見時の私の感想はめんどくさそうだったのだが、実際に中を読んでみたら、お前、やっぱりめんどくせえというような話ばかりだったので、ある意味ぴったりなタイトルである。そんなめんどくせえよに溢れたエッセイなのだが、これがまた素晴らしい。随所にキラキラした文章が散りばめられていて、まさに私が求めている「心動かされる」作品だった。

 

オードリーの中でも私は、若林正恭が好きだ。アメトーークで観る彼のことももちろん好きだし、面白さは当然知っていた。本好きであることも。なので、ほんの何気ない気持ちで手に取っただけである。そんなちょっとした興味で手に取った本が、とても素敵な作品だったときの喜びは、気の合う友達を知らない土地で見つけたような高揚感がある。このエッセイはほとんど若林の苦しみや葛藤で埋め尽くされている。モラトリアムをそのまま文章化したような作品である。

 

だがなぜだかそれが面白い。そしてなぜだか胸がスッキリする。爽やかな気持ちになる。自分の苦しみは大嫌いでも他人の苦しみは、かくもこんな簡単にエンタメになってしまうのだから、人間というのは醜いものである。ただ、それでも面白いもんは面白い。自分の感性に素直に従うべきである。どれだけ本書の内容が著者の苦しみに溢れていたとしても、そもそも読んでほしくて発表されている作品である。

 

むしろ、存分にその苦しみを楽しみ、エンタメとして昇華させてあげることが弔いになるだろう。大体にして文章が美しい。このエッセイは雑誌『ダ・ヴィンチ』での連載をまとめたものらしいのだが、連載の最初のころの文章はぎこちなくて、どうにも堅苦しさが抜けていなかった。しかし連載を重ねる内にコツを掴んだのか、次第に文章は洗練されていき、読みながら気になるようなことはなくなっていった。

 

それどころか、頻繁にハッとするような濃い文章が続々と現れるので、軽い気持ちで読めなくなってくるぐらいだった。純文学を愛しているだけあって、表現は多彩だし、非常に上品だ。そして意味の詰まった文章を並べてくれる。私の生活に、何気なく溶け込んでくるのが、彼のエンターテインメントらしさだと思った。また忘れた頃に読もうと思う。

 

(20代男性)

 

 

 

 

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