読書感想文「セカンド・ラブ(乾くるみ)」

心の強い人は、本当はもろいのかも知れない。主人公の正明が信じていたことが、実は恋人の春香や職場の先輩の紀藤にただ騙されていたのだったら、なおさらだろう。正明は人生のすべてが崩れた。小説をすべて読み終えてから、人をだますことがどれほど恐ろしいことかと身をもって知った。
 
物事には裏があるというが、たとえ自分の恋人や職場の先輩であっても、外面や雰囲気だけは良くても、内心は何を考えているかは分からない。人を見る目というのは、なかなかあるものではないが、仕事上や恋愛などで人と付き合うことがあっても、相手の内面を深く知ることが必要だと感じた。
 
この小説の主人公、正明は家庭環境が良くなかった。両親を亡くし誰に頼ることもなく、上京して家具製造の工場で普通に働いていた。人付き合いはあまりなく、仕事が終わってからは寮で読書をする、そのようなごく普通の青年である。その彼は紀藤が誘ってくれたスキーで春香と出会うことができた。それから正明は彼女と付き合うようになる。
 

 
 
しかし、デートを始めてから見知らぬ男性に春香が美奈子というホステスに間違えられたのだ。その時は人違いということでその場をしのいだ。ところが、正明は人違いのことが気になってスナックに行くと、春香と瓜二つの顔を持ち、彼女の双子であるという美奈子に出会う。
 
正明は春香と美奈子という双子の存在を知ることになるのだが、知ってしまったことで最終的に彼は人生が崩れてしまう。最初のほうの章の最後に、スナックに行かなければよかったのだ、という意味の文言があるが、本当は行ったほうが良かったのかどうか、読んでいて判断に迷った。
 
なぜなら真実を探るも探らないも、ただ知りたい、その気持ちがあるから正明はスナックへ行ったのだ。もし最終的に真実が分かったとしても、どう受け止めるかは残念ながら突き止めた本人次第なのだ。正明の場合は、恋人の春香だけではなく、彼女と付き合うきっかけを作った先輩の紀藤にも騙されていたのだから、衝撃は相当なものだっただろう。
 
最後まで読み進めていくと、正明が持つべき強さは単純な強さではなく、柔軟性のある強さではないのかと考えることができる。この小説は全部で14の章で構成されている。章ごとに話がまとまっており、会話文が多くとても読みやすかった。言葉遣いや心理描写も巧みで、展開が気になって読み進めてしまった。恋愛小説にミステリーの要素があって、とても面白い。
 
(20代男性)
 
 
 
 

セカンド・ラブ (文春文庫)
乾 くるみ
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