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読書感想文「ジェネラル・ルージュの凱旋(海堂尊)」

「速水部長が私的流用を一切行っていないという証拠があります。」花房看護師長の一言だ。ジェネラルルージュの異名を持つ速水医師に医療代理店との癒着疑惑が持ち上がり、彼はクロだった。しかし、速水医師が流用した現金は全て患者の命を救うための医療費に注ぎこまれており、自分自身の娯楽のための流用ではなかったのだ。
 
花房看護師長もそれを十分に理解し、いざとなれば速水医師と病院を去る覚悟で、それでも速水医師を守るために膨大な領収書を全て保存しておいたのである。私には戦慄を覚えるほど感動し、自分はこれほどの自分の仕事を全うするための覚悟を持っているだろうか?と、自分自身に問いかけた。
 
また、私の好きな速水医師の言葉は、部下である佐藤医師にかけた、「良いか、迷うな。佐藤ちゃんの判断=俺の判断だ。自信を持て。」だ。私はこれほど下の人間を信頼し、仕事を任せているだろうか?残念ながら、私の2つの問いへの答えはどちらも「いいえ」だ。
 
当時の私の職場は、先輩後輩の線引きがきっちりと引かれており、先輩には絶対服従のような空気が漂っていた。新入社員だった頃は、仕事でミスをすれば泣くほど叱られ、あまりのストレスに整理周期が乱れたほどだ。ミスをしないように細心の注意を払い、私は顧客ではなく先輩の顔色ばかり伺っていた。
 
しばらくして仕事に慣れると、今度は後輩への仕事のミスにイライラするようになり、自分がそうされたように後輩にも小さなミスで怒鳴り、寛容とは言い難い先輩だった。私は速水医師と花房看護師長の「患者の命を救う」という自分の使命に対する責任感、それを遂行するための強い覚悟を目の当たりにして、自分の世界がひっくり返るのを感じたのである。
 
それから私は、職場で怒鳴るのを止めた。今まで怒鳴っていたシーンでも、冷静に注意するだけに止めたのだ。最初はつい怒りそうになり、数日間はマスクをして飴を舐めたりガムを噛んだりしていた。全て一人で背負いこんでいた仕事をなるべく後輩を信頼して仕事を任せ、顧客一人一人の希望に焦点を合わせて仕事をこなすように心掛けるようにした。
 
そうしたら、職場の雰囲気が和やかになるのを感じ、仕事に対する姿勢や意識も今までとは全く違うものとなったのだ。これからも、速水医師の強い医師は私の中で生き続けるだろう。
 
(30代女性)
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海堂尊のこちらのシリーズは大好きで、一冊目のバチスタの栄光から、ナイチンゲールの沈黙、そしてこのジェネラルルージュの凱旋など出版されるたびに必ず購入してきた。ただ、一番好きなのはこちらのジェネラル・ルージュの凱旋だ。
 
ICUでチュッパチャップスをくわえながら、ばっさばっさと患者をさばいていく医師、通称ジェネラルの速水晃一がとにかく格好良すぎて、活字なのに思わずほれ込んでしまう。落ち込んだり、仕事でもやもやした時など、このジェネラル速水に会いたいがために、何度も何度もこの本を読み返した。
 
この速水を見ていると目の前のことだけに集中する、余計なことは考えない、そんな当たり前のことに立ち返れるように思える。この本に出てくる、倫理問題審査委員会「エシックス・コミュニティ」は実際、今の医療現場にはよく設置されている。ほとんどは、論文を通すための委員会になっていることが多いと思う。
 
この委員会の何とも言えないいやらしい感じは本当に共感できることが多く、実際の現場もこんなこと言いそう!と思わずうなずいてじまう。倫理というものの、文章や形式に重きを置き重箱の隅をつつくような、裏から物事をみて批判するようなそんな集団。実際の医療現場での『倫理』は目の前の患者さんにあって、形式だけではどうしようもないのに。
 
そんな風な悔しい思いをした医療従事者は決して小説の中の速水先生だけではないと思う。こんな何とも言えないエシックス軍団を、逆手に取っていく田口先生が、また見ていてスカッとさせてくれる。医療従事者としては共感できることが多いし、そうでない人にもぜひ読んでほしいと思う。
 
患者として受診するだけでは考えもしない病院の赤字経営や、国の方針によって右往左往する医療従事者の苦悩、そこで起こってくる倫理と心の闇。この本のようなことは、小説な中だけでなく実際はドキュメンタリーに近いもので、最近起こった点滴に異物混入事件や障がい者施設の殺傷事件など通じるところがあると思う。
 
(30代女性)
 
 
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