「或る女」の読書感想文①
有島武郎さんの小説の中でも、特に有名なのが或る女である。ありのままの自分を突き通す女性になりたいと思えた話しだ。この小説は女性というだけで社会から抑圧されていたこの時代に、自分自身の生き方で社会の抑圧に対して闘いそして破滅していく話である。
この小説の面白さは、その時代にこんな女性を描いていることだ。今の社会に生きている私は自由に恋愛し、仕事もし、身分なんて考えなくてもいい。誰と結婚しようともしまいとも自由なのだ。しかし、あの当時の女性は違う。
自由恋愛も許されず身分によって縛られた結婚をしなければいけない。今の私たちにとってはなんて息苦しいと思ってしまうが、あの当時の女の人からすれば私たちの生活なんて発狂ものである。
その小説の主人公の葉子はまさに今の現代の女性が描かれている。才能も美貌も備えた女性であり、今の女性でも憧れを持つだろう。誰もに好かれ、同性異性からもモテモテであり高貴な精神を持っている、しかし唯一の失敗は生まれてくる時代が違ったことだ。
自分の好きな人と結婚がしたい、一人ででも生活をしたいなどという事が受け入れられない時代に生まれてきてしまった。でも、それでもなおこんな社会の抑圧に対して闘おうとする。
私はこの女性をすごいと思った。私は同じ女性であり結婚はまだしていない。恋愛経験も少ない。しかし、現代もまたこの小説と同じように時代の風潮という社会の抑圧がある。自分の信念を通したいと思っても通らず、流れにのまれてしまうこともある。
女性だけれどももっと働きたいと言っても子供を持ったら退職しないといけない。今だって男が働き女は家にという考え方を持つ人もいるだろう。
そしてそれが「常識」だと言われ、それに妥協し、だって時代がそういう流れなんだもんといってしまえば終わりである。葉子はこんな社会に喧嘩をうったのだ。颯爽と社会の常識といわれる物を砕き、あくまで自分の信念を曲げず一人で進み続ける。
感服した。常識も時代も自分を縛るもの全てを切り落としていく姿に憧れすら持つ。自分のしたい事を曲げられて社会に入るのも悪くないのかもしれない。
しかし、私はそんな社会を息苦しく思う。たった一度の人生なのだ。常識なんてものを関係なく自身の信念を通す恋愛や生活。この人生の中で葉子みたいな生き方をしてみたい。こんな考えを与えてくれた小説である。
この小説の最後は葉子の体も心も破滅してしまう。時代に抗い成功するという明るい話ではない。それでも、私はこの最後が好きだ。
どこまでもその人を愛し、恨み、嫉妬に心を燃やした終わりではあるが、それこそが女性であると思う。好きな人と恋愛をし、嫉妬もする。本当に愛した人との恋愛をしているからこそそういう感情が生まれてくるのだと思うのだ。
本当に好きだから苦しい、そんな生き生きとした女性を見事に繊細に描いている。こんな生き生きとした女性になりたいと思う。そして私はやっぱり有島武郎さんの本が好きだ。そして、この或る女も私の好きな小説である。
(20代女性)
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