読書感想文「愛別外猫雑記(笙野頼子)」

住んでいるマンションのゴミ捨て場に、住みついた猫を助ける奮闘記なのだが、読んでいると人間不信になってしまいそうだ。主人公は猫を去勢して、餌をやりつつ、ちらかさないように掃除をするなどして、なんとか地域猫として周りに認めてもらえるようとする。
 
付近の住民としては、これ以上増えないし、汚されることもないのだから、黙認してくれてもよさそうなものを、それでもいちゃもんをつけてくる人がいるというから信じられない。「保健所に連絡する」と脅してくる、その人のせいで、せっかく多くの住民には了承されたのに、主人公は猫を連れて、引っ越す羽目にもなるのだ。
 
猫だけでなく犬など、人間以外の動物に、いつから人はこんな過剰反応するようになったのだろうと思う。作品のその人は、目の前を歩いているだけで、気に障るらしい。頭がおかしいのではと思うものの、現状、目の前を歩く動物を滅多に見かけることがない。それこそ目障りだからと、動物を一匹残らず排除したような有様だ。
 
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ペットは別として、そんなに人は自分の住む場所に、他の動物がいるのが耐えられないものなのか。すくなくとも、昔はそんなことはなかったと思う。私が子供のころ、母が言うには、向かいの家の猫が近所中の家の窓を開けて、勝手に中に入っていたらしい。自宅でも一度あり、気がつけば居間に座っていて、テレビを見ていたという。
 
それくらいならいいとしても、鍋に入ったおかずを、つまみ食いをするなど、悪さもしていたが、別に近所の誰も、飼い主の家に文句を言いにいかなかったし、トラブルになることはなかったとのことだ。今なら、下手したら訴訟沙汰になるだろう。そして、さらに遡って、母が子供のころは、夜になると近所の道路を犬が群れをなして闊歩していたそうだ。
 
うっかり出くわしたら、襲われそうで怖いが、さぞ圧巻だったろうその光景を見たかったと思わないでもない。自分のテリトリーをきれいに保ちたいがために、汚くて臭い動物を追いだした人間が残酷だとかひどいとか思うより、単純に人間以外の動物が傍にいないのは寂しい。住宅街にいて、人さえ見かけないときがある。
 
静かに建物だけが佇んでいる景色は、見慣れたもののようで異様さをこの頃は覚える。人間以外が住むことを許さないとばかり潔癖さが見てとれて恐くなるのだ。そして、そんなに動物を嫌悪しなくてもいいではないかと思い、やはり寂しくなる。
 
(30代女性)
 
 
 
 

愛別外猫雑記 (河出文庫)
笙野 頼子
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