読書感想文「タイムスリップ・コンビナート(笙野頼子)」

この小説の事を知ったのは、作品で最終的に目指す「海芝浦駅」と言うのを知ったからで、笙野頼子と言う著者の事も、この人の他の作品も知らない状態で、早速買って読んでみたら、すぐにこの世界に引き込まれた。夢で見た「マグロ?」との恋。電話がかかってきてそれをきっかけに出かけて行くという「設定」になっているが、その内容はすべて主人公である「私(著者?)」の頭の中の世界が描かれているような気がして、そもそも電話自体が本当にかかってきたというより夢の中でかかってきたとも想像できる。主人公である「私」はそれがあたかも「現実世界」であるかのように、何の躊躇もなくそのまま出かけていく。都内の情景が所々で入り込んでいて、その都度移動しながらすれ違う人、電車に乗っていて前の席に座っている人、その人たち一人一人をヒューマンウォッチングしながら取り上げて、頭の中で「あれやこれや」と勝手な想像を膨らませる。こうしてずっと現実と夢の中を行ったり来たりを繰り返しながら、横浜の鶴見区にやってくる。途中で見つけた「沖縄会館」と言う建物。ここでは沖縄そばを食べながらお土産品を見るだけなのに、それまでの夢と現実のもやもやした状態の延長線だったので、「オキナワ」と言う遥か遠い存在が、目の前にあるのも現実ではないようなしてしまう不思議な気持ちになる。そのままついに最終目的地の海芝浦駅に到着して工場に囲まれた海を見てこの話は終わる。結局主人公の「私」は何をしたかったのか最後までよくわからない内容だったが、別にわかる必要もないのかなと思った。現実逃避のために夢の中に逃げるとかそういう事は良くある話だけど、この作品を読んだら逆に夢の中を逃避するために現実世界を歩いているような気がした。ひょっとしたら「私」は、日々の現実からの逃避を「夢」を使ったのかもしれないけど。読んだ後も結構頭の片隅に残る不思議な作品であった。海芝浦駅は行ったことがないけれど、沖縄会館と呼ばれる鶴見区の沖縄の食材屋さんは行ったことがあるので余計に情景が浮かんで一気に読み込めた作品だ。

(40代男性)

 

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