読書感想文「少年H(妹尾河童)」

私は、この本の読後感が大好きだ。戦争の話が大半を占めているにも関わらず、戦争の悲惨さはあまり感じずに、主人公の成長がすばらしくて、読んだ後に晴れやかな気持ちになって終わることができた。とくに、上巻の主人公が幼い時の話には、「自分がこの年齢だったときに、こんなに自分の考えをしっかりもっていたかな」と自分と比較して考えてしまった。
 
主人公を取り巻く人々も、とても個性が強くて魅力的だった。とくに私が忘れられない人が「男姉ちゃん」だ。繊細でありながらも、自分の中にはしっかりと意思があって、それでも時代に翻弄されてしまう人物として登場した。全体を通して感じることは「明るさ」の内容だが、人間の弱い部分が、男姉ちゃんの章で書かれていることも、内容に深みを感じることができた。
 
男姉ちゃんは、外見から主人公に馬鹿にされる場面があったが、そのときにガツンと主人公をしめる人間も登場した。本を読んでいるときに、人間の嫌な部分を書いている個所がいくつか出てくるが、そのたびにガツンと正す人が出てきたことも、読んだ後の爽快さの原因だったのかもしれない。また、きれいごとばかりを並べていないことも、おもしろかった。
 

 
 
とくに、卵の扱いだ。戦時中に、卵が貴重なものだったという話は、何度も聞いたことがあった。この本でも、卵が貴重だったという内容がでてきた。ご褒美に買ってもらった卵を大切に持ってい帰るのだが、読んでいる私までもが、卵が無性にほしくなってきた。私は、わりと本を読んでいても、客観的に読んでいる性格なのだが、この本に限っては、卵と白飯の価値観を変えるような衝撃を受けた。
 
戦時中のため、ご飯がない話が何度かでてきた。少年Hとは、主人公のことを指していたのだが、一般的な書評は「少年Hが感じた戦争の矛盾」について書かれていることが多い気がする。しかし、私が感じたことは「少年Hは戦時中に食べ物を通して、人間についても自分についても考え、成長した話」であると思った。
 
現に、食べ物は卵以外にも登場した。箸が立たないような薄いおかゆの話も忘れられない。薄いおかゆと聞くと、とても暗く感じるが、少年Hにはそれすらも明るく変えてくれる仲間がいた。主人公の家族も、一人ひとりが独立した考えを持って、行動していることがすがすがしかった。そして、学校の友達も個々にいろいろなことがあっても、自分の意思を持っていて、友達を思う姿がすがすがしかった。
 
主人公たちが通う学校の中には、読んでいて「この人は悪い人だ」と感じる先生も出てきたが、その先生への子供たちの接し方も、読んでいて引き込まれていった。また、しばらくしたら気軽に読み返して、「どんな環境でも時代でも、自分の意思がしっかりしていれば大丈夫なんだ」と自分をふるい起したいと思う。
 
(30代女性)
 
 
 
 

少年H(上) (講談社文庫)
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