「氷点」の読書感想文①
この小説は私の人生の励みになる。元々小学校の頃から小説が好きだった私はジャンル問わずなんでも読んでいて、図書館に入り浸る毎日だった。中学生になり、あるスペシャル番組でこの「氷点」をテレビでたまたま見て、そして小説を改めて読んだ。
初めて人生で心を鷲掴みにされたように衝撃を受けた。小説がさらに好きになった一冊である。私は人の人生というのは儚いもの脆いものだと思う。毎日がむしゃらに悩んで頑張って悩んで涙して、心そのものが左右されるんだとすごく実感する。
心が弱くなればどんどん悪い方向へ行く。猜疑心、悲しみ、嫉妬、恨み…。心が強くなればどんどんよい方向へ行く。希望、喜び、幸せ、嬉しい…。とはいえ、心が良い悪いとは一体なんだろう。主人公の陽子の様に信念が強い女性のことだろうか。
初めて読んでから20数年経つが、毎年のように感じ方が違う。読めば読むほど考えさせられる。筆者のクリスチャンとしての生きざまが小説に散りばめられているが、そんなにうるさくはない。むしろ一人一人本当に実在した人物なんじゃないかと思うぐらい生々しく描写されている。
だからこそ悩んだとき悲しかった時に、時々読み返してまた元気になって心が昂るのを何度も味わった。小説は映像と違い、頭のなかで思い描く。当たり前なことだが、意外にも文章でそれを伝えるのは難しいと思う。
喜びも悲しみも悔しさも。それらを全部表現するために勉強すべきかと思えばそうでもない。確かに読みやすさや伝えやすさは勉強すべきかもしれないが、感性はその人が生きてきた人生を表すのではないだろうか。
些細なことでも幸せだと感じることや腹のたつことがあっても冷静になること。また、悩むことがあっても希望があるということ。優れた小説は世の中に何万冊とあるが、その何万冊分の筆者の経験や思いが小説の中で命を吹き込まれて生きているのではないかと思う。
私はこれからもそういった小説を常々読んでいきたい、毎日を無駄に生きるのではなく日々心を豊かにすべきだと考えさせられた小説であった。
(30代女性)
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