読書感想文「Tengu(柴田哲孝)」

柴田哲孝によるUMA(未確認生物)をテーマにした小説である。彼のUMAを題材にしたものは1991年に「KAPPA」が発表されており、本作はそれに続くもので、第9回大藪春彦賞を受賞している。また、このあと、「DANCER」「RYU」「WOLF」と同様のシリーズが続く。私はまず「RYU」を読み、主人公である有賀雄二郎に惹かれて、続いて「KAPPA」を読んだ。
 
そして本作に読み進んだ。「KAPPA」はブラックバスやミシシッピーアカミミガメなどの外来生物に焦点を当て、ワニガメをUMAに見立てた。また「RYU」は米軍を絡めたものではあったが、この「TENGU」は作者の得意とする国家機密の色の濃いものになっている。
 
ただ、「RYU」「TENGU」と異なり、残念ながら有賀雄二郎は途中で登場するものの、本筋に大きな影響を及ぼすこともなく、単に登場させただけ、にとどまった。主人公は常に道下である。UMAに関する部分では、他の作品は実在する生物を勘違いするという視点で書かれているのに対し、ここではまさに「UMA」を登場させている。
 
ひれをどう感じるかによって本作への評価が大きく分かれるところであろう。残念ながら、私はちょっと強引すぎる内容に、少し興ざめした。「UMA」登場させるところまでは許容できるとしても、最後の展開はあまりにも強引、いわゆる荒唐無稽の域を出ない。
 
天狗伝説とベトナム戦争、果ては「9.11」の事件にまで結びつけるのは柴田の最も得意とする分野、手法なんだと思う。彼のこの部分のファンにはピッタリの作品であろう。ただ、有賀雄二郎と愛犬ジャックの活躍を楽しみに、またUMAの謎解きを楽しみにしてこの本を手に取った私は、ちょっと残念に思った。
 
うーん、もっと純粋にエンターテイメントを楽しみたかったかな。この後、まだ読んでいない「DANCER」や「WOLF」も読むつもりであるが、有賀とジャックの活躍がどのように描かれているのかを楽しみにしている。
 
(60代以上男性)
 
 
 
 

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