読書感想文「父からの手紙(小杉健治)」

父親がいない麻美子と刑期を終えて出所したばかりの圭一。二人の話が交互に繰り返されて行きます。この話はどこで交わるのか・どう繋がっているのか・どういう関係なのかなどが、気になって気になって、どっぷりはまっていくような感じがしました。読み進めれば、中盤位でおおよその事情を把握できますが、読んでよかったと思いました。

 

しかしながら心の葛藤を描いているシーンが長く煩わしく思います。麻美子の父は、母と弟と彼女を残し、「好きな人が出来た」と言って家を出て行きます。それから10年が経って、当時中学生だった麻美子も24歳になり、いわくつきの結婚が控えている中で、あの事件は発生してしまいます。彼女の婚約者が殺害されてしまうのである。

 

もう一方の主人公である圭一は、このとき、ある殺人による服役を終えたばかりである。彼の腹違いの兄の焼身自殺を起点とするある事件に巻き込まれてしまっていて、衝動的かつ突発的に起こしてしまった殺人は、10年前まで遡って行くのである。

 

一見すると、繋がりようのないストーリーではあって関係ないような2人の人生は、麻美子の父が、家を出て行ってしまった、そして、圭一の兄が焼身自殺した10年前を起点として繋がりを見せ始めるのである。失踪後に、毎年彼女の誕生日に送られてくる父からの手紙は、彼女や、彼女の母、弟のことを気に掛ける愛情が溢れている。

 

婚約者の殺害と、その容疑者として逮捕された弟。その苦境のなかで麻美子は父を求めて家を出た真相を探求する。一方、圭一は失われた10年を取り戻すため、兄の妻であるみどりを探して行く。二人の探索は、一旦距離を置いた二人の人生を再び交差させ、繋がりを見せていくのである。

 

思いもよらないストーリー展開は、読んでいてスリリングであり、家族とは何なのかを考えさせてくれる。実際私も父が亡くなっており、父の愛情を知らずに生きているが、生きていたら、父の愛情を感じずにはいられない。家族を思う気持ちがしっかり伝わってくる作品です。

 

(40代男性)

 

 

 

 

父からの手紙 (光文社文庫)
小杉 健治
光文社
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