「宝石商リチャード氏の謎鑑定」の読書感想文
初めは、よくある謎解き推理小説なのかと手にとった。けれど読み進めると、実際は推理よりも宝石についての知識が深くなるような内容だと感心した。ピンクサファイアの中でも、蓮の花の色のようなオレンジがかったものをパパラチアサファイアと呼ぶとか。同じ真っ赤なルビーでも、加熱処理をされていないものはとんでもなく高価だとか。
そういった、少し踏み込んだ知識を宝石商人のリチャード氏が詳しく説明してくれるのだ。とはいっても、ただそういった情報をつらつらと書かれてもつまらない。この本に良いところは、宝石についてとても詳しいリチャード氏の相棒に、全く素人の大学生がついているという点だろう。類まれな美貌を持ちながら、完璧な日本語も操るスリランカ系英国人のリチャード氏。
そして彼を助けるかたちで、偶然出会った大学生の中田正義。読み手はある時はリチャード氏の気持ちになって、またある時は正義の心情に共鳴しながら先に進める内容になっている。この2人を中心に物語がまわっていくのだが、登場人物も実にユニークな人々が多い。伝説のスリ、同性しか愛せない女性、ホストのふりをする男性。
そんな人々が何を思って生き、何に悩んでいるのかを、宝石を通してリチャード氏や正義が鑑定していく物語だ。小さなお店を持っていて、そこに訪れるお客さんの相手をしていく。こう書くと単調なようだが、ある程度の決まりごとがあった方がテンポがいい。主役の2人は変わらず、短編で話が進んでいくのであっという間に読めるのも魅力ではないだろうか。
まだ一巻目であるが、すでにシリーズが数冊出版されているようなので、ここから発展していくストーリーも楽しみだ。リチャード氏は、何故日本の銀座でお店を開いたのか。大学生の正義は、この先どのような道に進むのか。そして、今後どのような宝石を通して、どんな人生が垣間見えるのか。宝石好きとしても、読書好きとしても楽しめるシリーズだと読み終えて思った。
(30代女性)
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