「十二人の死にたい子どもたち」の読書感想文
登場人物の十二人にそれぞれ、役割や見せ場を作ろうとするあまり、上手く登場人物を動かし切れていない場面が多々見られたのが残念に思った。また、男6人女6人の1対1の比率で書かれて居るが、男性よりも女性の方が感情的で頭が悪い人物が多く、公平性に欠けるのではないかという印象を持った。
特に、キーパーソンの一人であるアンリ(女性)は、作中では明言されることはないが、反出生主義という思想を持っており、人間は子どもを産むべきではないという発言を行い、それを契機として、他の11人が自殺を一斉に思い留まるという終盤の展開は、アンリという少女の存在を否定するかのようであり、一人の人間というよりは、著者が容認することの出来ない思想を機械的に設置し、物語中の道具の一つとして扱ったような作りなっており不快感を拭えなかった。
私自身の意見としては、この小説は若い人間、取り分け思春期の子どもを主なターゲット層に考えて書かれているものだと考える。その為、子どもの中にはネグレクトや親との関係性に悩んだ結果、アンリと同じような考えに至るような子どもは少なからず存在しており、彼女に共感を持つ読者に対して、ただ単に否定するような結果でしかこの問題に答えが出せなかったというのは、作家としての感性に悪い歪みを感じた。
少数派の否定と言ってもよい。大人にターゲットを絞った作品ならまだしも、児童に書かれた小説においては私はこれを間違っていると思わずにはいられなかったのである。非常に残念だ。しかし、この小説にはよいところもあると感じた。薬を使った自害の方法がどれだけリスクがあり、本人がどれだけ苦しい思いをするかというのを克明につづっている点だ。
私はこの点に作者の良心と小説としての誇りを感じるのである。死を軽く書いた作品が多い中、死の苦しみや重さを小説の中で描きだすことは、非常に重要なことだと感じずにはいられないのである。死とセクシャリズム問題など、多くの点でこの本は問題の提起を私の中に起こした。
(20代男性)
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