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読書感想文「ぼぎわんが、来る(澤村伊智)」

「ぼぎわんが、来る」の読書感想文①

この作品は映画化もされて、ホラーとして非常に話題性のある作品である。話の大筋の内容としては、田原秀樹と言うごく普通の会社員が突然、ぼぎわんと呼ばれるある地域の化け物に大人になってから襲われ、順調に進んでいたはずの人生が少しずつ狂い始め、その周りの人間もぼぎわんによって浸食されていってゆくといったストーリーである。
 
小説の運びとしては、まず冒頭から秀樹がある女性と電話で切羽詰まった状況で話しているシーンから始まる。あれと呼ばれる何かに怯え、あれへの対処法を教えてもらっている状況で会話の中から、秀樹の妻と娘にもすでに被害が及んでいることが伺える。
 
そして彼女はあれを家に招き入れなさいと言い、あとは私の仕事だとセリフを残し、ここから回想シーン、そして現在の秀樹の状況まで話が進んでいくこととなる。あれと呼ばれていた異形の者は秀樹の地元に古くから伝わるぼぎわんと呼ばれる化け物で、それに話しかけられても決して返事をしてはいけない、もし返事をすれば山に連れていかれるというもの。
 
秀樹は大人になるまでそんなものの存在など忘れていたが、ある日会社に知紗ちゃんの件で会いに来ている人がいると後輩から告げられる。知紗とはまだ妻のお腹の中にいる娘の名前で、誰にも教えていない筈なのにと疑問に感じながらも出ていくと、そんな人物はどこにもおらず、追いかけてきた後輩が突然血だらけになり倒れてしまう。
 
後輩は入院することになったが詳しい原因は分からず、日に日に憔悴しきっていく。それ以来身の回りで不可解な出来事が起き始め、秀樹はぼぎわんの存在を思い出す。ここからは非常にテンポよく話は進み、徐々に秀樹の本当の人間性が浮き彫りにされていく。はたから見れば家族思いの良い旦那であり、父親である。
 
しかし本当は育児は自分の育メンパパブログの為であり、妻のことも子供を産む道具だとしか思っていない最低な人間であった。本書はそうった人の心の隙間の描写が非常に緻密に描かれており、何故ぼぎわんが秀樹の元にやって来たのか、何故執拗に付け狙うのか徐々に明らかになってくる。
 
話は、秀樹→秀樹の妻→フリーライターの野崎この三人の視点から描かれるのだが、それぞれに心の隙間があり、ぼぎわんはそこに上手に付け込んで入り込んでくるのだ。だが、そんなぼぎわんも野崎の知り合いである、比嘉真琴という女性の登場でうかつに手を出せなくなる。彼女は沖縄の巫女の家計に育った人物で、心霊ごとに詳しかった。
 
がまだまだ半人前でぼぎわんの圧倒的な力にやられてしまう。物語の後半、真琴の姉が登場するのだが、とくにかくこの人物が強く、警察トップにも顔が利くほどの実力を持っている。そして物語の初めに秀樹と電話で話していた人物こそ、真琴の姉である、琴子であった。
 
実は本書の半分以上はこの琴子とぼぎわんの対決により描かれている。がそれまでの登場人物への緻密な心理描写により、より感情移入がしやすくなっており、琴子が正義のヒーローのように見えてくるのだ。そしてこの本は比嘉姉妹による除霊シリーズの一作目であるのだ。
 
(20代男性)

「ぼぎわんが、来る」の読書感想文②

この本に出会ったきっかけは、ショッキングピンクの表紙に太字に「ばぎわんが、来る」と書かれていたインパクトに惹かれたからだ。ホラー小説というものを読んだことがなく、いつもサスペンスの小説ばかり読んでいたので、刺激欲しさに購入した。冒頭から緊張感のある書き出しに惹きこまれ、読み終えるまで早かったのを覚えている。
 
まず不可解な名前「ぼぎわん」についての直接的な描写はなく、「何かおそろしいもの」という言い方のまましばらく話は進められていく。一見うまくやっていそうな家庭がどんどん何者かの影響で狂い出していくのだ。読み進めていくうちに思ったのは、これは霊や妖怪の話というよりは人間が本来もっている寂しさ・孤独にまとわりつく怨念のようなものの話なのだ。
 
夫は自称育児パパをブログに立ち上げ、ホームパーティーで堂々「いい父親になるんだ」と大勢の前で宣言するような男。妻は実際育児の手伝いなんかしない夫にうんざりし、子にイライラをぶつけるようになる。どこの家庭にもありそうな展開だが、そんなところにくるのが「ぼぎわん」なのだ。
 
前半部分はそんな闇の部分を隠し、ただぼぎわんが家庭を襲ってくる様子を描いている。現実にはありえないような超常現象が3人の身に起こり、それにおびえる妻と子をただ守ろうと夫は必死に戦うのだ。そして後半部分には実際にあった闇の部分が明らかになり、ぼぎわんの正体は何なのかと事を進めていく。
 
後半はどんどん世界に惹きこまれていき、それからは読み終えるのはあっという間だった。次々登場する人物の背景にある闇の描写もまたリアルだった。一人一人に抱えている闇が細かく、生々しくこちら側に伝わってきたのだ。ぼぎわんが近づいてくる様子は、こちらまで血の匂いが漂ってくるような不気味さがあり、息遣いも聞こえてくるようだった。
 
自分にとってのホラー小説デビューとなる作品だったが、とても満足できた。しかし、ホラー小説といってもただのホラー小説ではない。人間の心理に関する描写が多く、人間臭さもあってドラマを見ているかのような気分にも浸れた。ひとつのジャンルに絞れないような魅力が、この本にはあった。
 
(20代女性)

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