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読書感想文「ひかりの魔女(山本甲士)」

「ひかりの魔女」の読書感想文

浪人生の光一の家に、長い間会ってなかった祖母が同居する事になるところから物語はスタートする。一緒に暮らし始めるとおばあちゃんは何やらとても慕われていて、作る料理は地味なのにとてつもなく美味しくて、何故か周りのみんなを幸せにしてしまう…いったいおばあちゃんは何者なんだろう?
 
読みながらおばあちゃんのシンプルな生活ぶりに驚くのは、きっと私も光一と同じく物が溢れた世界の現代人だからだろう。生まれた時から便利なもの、そうでない物に取り囲まれている。それが当たり前になっているし自身にとって本当に必要なものかなどじっくり考える機会どころか、そんな気持ちすら持たずに日々を暮らしてきた気がする。
  
しかし、このおばあちゃんは私や光一と違い自分に何が必要か不必要かを理解していて、それをベースにして生きるのが定着していて彼女にとっては特別でも何でもない当たり前の日常なのだ。こんな生活ぶりを覗いていると実際真似するのは面倒くさそうだなと思う反面、余裕のある洗練された丁寧な暮らしを感じて憧れを持ってしまう。
 
それでいて自分のベース以外は受け付けません!なんて言う頑固者じゃなく、周りの提案も柔らかい笑顔で受け入れ、相談事がきたなら誰も分からないうちに上手いことやってしまうのだ。これはあっぱれ、こういうところも大変魅力的である。また、おばあちゃんだけでなく他の登場人物みんなが何となく私たちの近くに住んでいそうな人物像ばかりなのも親近感が湧いて嬉しくなる。
 
この人達もそれぞれが色々な境遇の中でおばあちゃんの温かみに触れた人たちで、今も昔も変わらずおばあちゃんの元へ集まってくるのだ。主人公の光一は家族の行く先に不安と心配をしながらもお母さんにはちょっと反抗的な態度を取ったり、突拍子もない少々行きすぎる妄想をしたりと今時の若者らしい青年で、所々クスッと笑わせてくれる。
 
この本を読み終わった後は、春の日差しが眩しい縁側でお昼寝をして目が覚めた時のようなポカポカと暖かい気持ちになった。これがおばあちゃんの魔法の力なのだと私は感じている。
 
(20代女性)

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