読書感想文「一○一教室(似鳥鶏)」

どうして忘れてしまっていたのだろう。この本を読むまで、高校時代の嫌な思い出は全て頭の片隅に追いやり、綺麗な思い出だけを残していたのだ。だから、自分の高校時代は輝かしかった、そう思い込んでいただけではないか。息子に学校が嫌だと言われた時、私は無理に行かせようとした。自分の中には都合よく美しい高校の思い出しか残っていないのだから。

 

何故そんなに学校を嫌がるのか、想像がつかなかった。いや、本当は出来たはずだ。嫌な記憶を封じ込めておかなければ。全体行動、グリコポーズのような恥ずかしい体操、体育教師の罵声。最初の何ページかで、頭に衝撃がきた。私は、この時の嫌な感情を知っている。しかも具体的な実体験としてリアルに想像できる。そう、辛すぎてなかったことにしていただけなのだ。

 

今一度呼び覚まされる記憶。一人行動が遅れただけで、他の全員が一斉に腕立て伏せ。肩に髪がついているのに結いてない、というだけでビンタ。授業中にふと笑い声をあげただけで、教師に殴られ2m程飛んだ男子もいた。その学校に入ったというだけで、私たちは生徒ではなく囚人だったのだ。何故こんなにも辛い記憶を忘れ去り、息子を自分と同じ学校に入れたのだろうか。

 

 

 

私の罪は深い。柔道部の練習中の事故で命を落とす生徒、それも母校と重なった。何年か前にリンチ事件を起こしたのだ。亡くなった生徒のことを思うと、心臓のあたりが苦しくなる。私は自宅からの通学だったからまだ自由だったが、寮生活の柔道部、野球部は、101教室とさほど変わらない環境だったのではないだろうか。野球部においては、坊主頭で先輩と相部屋。

 

学校外からの情報を完全にシャットアウトされ、早朝から遅くまで練習する日々。今でも監督からの絶対命令を受けてバントする姿に、胸が痛んでならない。先日、ベンチでコーチが往復ビンタをしている姿もテレビに映されていた。本の中で主人公が悪しき学校と戦うことにより、私の頭の中の悪い記憶もだんだんと消化出来るようになった。

 

ひとつひとつ思い出し、大丈夫だ、と昔の自分に言ってあげることで、片隅に追いやらずにいつでも思い出せるようになった。そして私は息子に謝った。自分の人生なので自分で決めて欲しい、そう言ったのだ。

 

(30代女性)

 

 

 

 

一○一教室

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